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本記事の要点

    • ・インスタントメッセンジャー業界では今生死をかけた熾烈な争いが繰り広げられています。
    • ・アジアではLINEとカカオが熾烈な争いを繰り広げ、東南アジア市場の奪い合いに全力を尽くしています。
    • ・まだまだLINE優勢の様相を呈していますが、カカオが推し進める超ローカル戦略がどこまでLINE追撃に貢献するか注目です。

本文

「インスタントメッセンジャーといえばLINE」

世界で通用する常識だと思っていませんか?

日本では圧倒的な地位を誇るLINEですが、世界ではSnapchat(スナップチャット)、WeChat(ウィーチャット)、Whatsapp(ワッツアップ)と言ったインスタントメッセンジャー(IM)アプリが熾烈なメッセンジャー戦争を繰り広げています。

どのIMアプリもまだ決定的なマーケットリーダーがいない新興国市場への進出を着々と進めており、日本では圧倒的な地位を誇るLINEも同様に世界進出の礎を築いています。

そんなLINEの脅威となり得るのが同じアジア出身のIMアプリカカオトーク

韓国発のカカオトークは同国の市場を制圧し、同様の戦略を取るLINEに追いつけ追い越せとアジア市場の獲得を虎視眈々と狙っている模様です。

カカオトークを取り巻く市場環境

カカオトークが抱えるユーザーは1億3,000万人。

WhatsAppの4億人、WeChatの2億3,000万人、LINEの3億人にはまだまだ及びませんが、地元韓国での総ユーザー数は約3,400万人との報告もあり、既に総ユーザー数の約75%を海外ユーザーで占めていることになります。

もちろん海外ユーザーの割合はLINEも80%を凌ぐと言われ、脱・本国の姿勢は両者ともに変わりません。

また、両者ともにマネタイズを意識したスタンプ及びソーシャルゲーム事業をIMアプリに加えて展開しており、LINEとカカオトークの熾烈な争いは今後も強まることが予測されるのです。

LINEは今期400億円を超える売上を記録するとも予測され、今期の売上200億円を見込むカカオトークは今後最大の競合であるLINEを凌ぐ勢いで成長することが求められます。

苦戦が予想される中、カカオトークはどこに勝算を見い出しているのでしょうか?

カカオの「超」ローカル戦略

インドネシア、ベトナム、フィリピン。

スマートフォン利用率の向上が目覚ましい一方で、IMアプリのマーケットリーダーが未だ確立されていないのが東南アジア諸国です。

カカオトークやLINEが今最も注力する国々であり、北米発のIMアプリに比べて「共通の背景を持つ地域出身」としてカカオは文化的アドバンテージを持っているとも言われています。

しかし、LINEは既にインドネシアで約1400万人のユーザーを獲得しており、IMのネットワーク外部性を考慮するとカカオが単純に新市場の言語を追加しただけではパイの奪い合いに負ける可能性が非常に濃厚なのです。

そんな現状を目前にカカオが打ち出すのが「超」ローカル戦略です。

・地域特化ステッカー

カカオトークでは、単純な言語対応にとどまらず、各市場の文化に合わせた地域限定ステッカー(スタンプ)を提供しています 。

地域限定ステッカー制作の際には必ず各市場のローカルアーティストを採用し、ローカルビジネスを活発にすることで「地域に根ざしたIMアプリ」というブランディング戦略に乗り出しています。

・アジア一極集中

一時はカカオが積極的に参入を目指した南アメリカ市場ですが、コストの高さ故に早々に撤退を決めています。

また、ヨーロッパは文化的に統一性が無く、各文化へのきめ細かな対応が難しいことから参入を控えています。

北米に関しては既にWhatsApp、Facebook、Twitterなどの超競合がひしめいており、今後急いで北米市場に進出する予定はないとも既にカカオは明らかにしてます。

・ブランド刷新

カカオは、「カカオトークと言えば黄色」という本国で成功したブランドイメージを脱ぎ去る覚悟も表明しています。

カカオトークのCEOも米紙に対するインタビューの中で、

「オーダーメイドが(アジア戦略の)鍵になる。韓国では黄色が浸透したが、インドネシアのユーザーはオレンジ色を好むかもしれない。もしそうであればブランドカラーはもちろん、UIを大幅に変更することもあるだろう。」

と大胆なローカル戦略を示唆しています。

もちろんカカオが掲げる超ローカル戦略が新興国市場に既に浸透しつつあるLINEのネットワーク外部性を打ち砕く保証はありません。

しかし、主要サービス、その他サービスラインナップ、海外展開戦略など極めて類似したビジネスモデルで勝負する両者が差別化を図る上で、カカオのローカル戦略はLINEを脅かす武器になる可能性が十分にあると推測してなんらおかしいことはないでしょう。

まとめ

    • ・インスタントメッセンジャー業界では今生死をかけた熾烈な争いが繰り広げられています。
    • ・アジアではLINEとカカオが熾烈な争いを繰り広げ、東南アジア市場の奪い合いに全力を尽くしています。
    • ・まだまだLINE優勢の様相を呈していますが、カカオが推し進める超ローカル戦略がどこまでLINE追撃に貢献するか注目です。