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本日より、社内の全ての役職を廃止します。」

こんな突飛な発表があったら、みなさんはどんな反応を示しますか?

実はこれ、クチコミ効果で劇的な成長を遂げたグロースハック企業として知られる靴のオンラインストア Zappos(ザッポス)で実際に起こっている出来事なんです。

階層のない管理体制「ホラクラシー」

ホラクラシー。恐らく殆どの皆様が初めて聞く言葉でしょう。

ホラクラシーとは、ヒエラルキーの無い民主的な管理・組織システムを指します。ヒエラルキーが存在しないということは、課長や部長といった役職が存在せず、正にフラットな組織体制ということです。

ではなぜZapposはホラクラシーを実践するに至ったのでしょうか?階層のない組織体制ホラクラシーのメリットを見てみましょう。

  • ・社員のフォーカスがオフィス政治からタスク中心の考え方に変わる

組織で働く以上、最大の目的は共同作業によるタスクや事業の成功であるべきです。しかし、階層を気にするばかりに社員は社内の力関係の調整に気を取られ、結果としてタスクが疎かになってしまうことことも決して稀ではないのです。

例えばあなたが普段はなかなか会話の出来ない他部署の優秀な上司に食事に誘われたとしましょう。行きたい気持ちは山々ですが、これを直属の上司が聞いたらどう思うか考えると果たして行っていいものか悩んでしまいますよね?日々のミーティングでも、上司を立てるために意に反して同調したり、意見を押し殺したりしていませんか?

そんな些細な悩みが積もり積もることで、企業は相当な時間をロスするだけでなく、もしかしたらその食事や意見から会社の成功に貢献するアイディアが生まれるかもしれないという機会を損失することになりかねません。

部署や役職によって複雑にされた人間関係は企業の効率を大きく下げるというのがホラクラシーの考え方なんです。

  • ・社員は自身が最も得意なタスクに集中できる

従来のマネージャーであれば、技術的な角度から事業を管轄するのみならず、部下の士気を高めるなどの個人的な管理までを網羅する必要がありました。

しかし、もちろんどのマネージャーも両方のタスクに特化しているわけじゃなく、片方に関しては優秀だけどもう一方は…ということも少なくありません。ホラクラシーの下ではこうした種類の違う2つのタスクが同じチームやサークルに在籍する二人の人間に振り分けられ、それぞれが得意とするタスクのみに集中することが出来るのです。

  • ・チームやサークルの形成が柔軟に行われる

ヒエラルキーが発達すると、社内の異動や別部署との連携がどうしても難しくなります。これにより本来であれば新たな可能性を生み出すかもしれないシナジーが組織体制により殺されてしまうのです。

その反面、部署や役職に縛られない分チームやサークルの形成が活発かつ柔軟に行われ、同じ人的リソースから新たなシナジーが次々に生まれていくというのがホラクラシーが掲げる考えです。

*ホラクラシー支持側のの見解であり、筆者の個人的意見ではありません。

「ホラクラシー」の問題点

一見理想的に思えるホラクラシーですが、実際は以下のように問題点も多く存在するようです。

  • ・給料を決めたり、クビを切ったりするヒトは必要

組織は事業の進退に伴って人員や給料の増減を決定する必要があります。ザッポスもこの点は模索中とのことで、今後現CEOのトニー・シェイ氏が今後どのようなポジションに置かれるのかが未だ不透明な状態です。

  • ・人間は規制されて初めてパフォーマンスを発揮する。

階層という規制・監視が無くなった時、自由の身になった人間のパフォーマンスは低下するというホラクラシーに対して否定的な見解も多く見受けられます。

  • ・階層のないチームやサークルの中にも自然にオフィス政治は生まれる

フェイスブックのザッカーバーグも「全ての社員が同じワンフロアの中で働く」環境を理想に掲げていますが、実際は誰がザッカーバーグの近くに座るか静かな争いが起きているそうです。一見上階層を無くしても、オフィス政治は無くならないということでしょうか。

このように、メリットもデメリットも叫ばれるホラクラシーですが、ザッポスの決意は固く、今年の内には全ての役職を取り払う意思を表明しています。ザッポスの成功如何によっては、進歩的なIT起業を中心に今後ホラクラシーが根付くこともありえるでしょう。

サマリー

  • ・グロースハック企業としても知られるザッポスは、社内の全ての役職を取り払い、組織の効率を改善することを表明しています。
  • ・階層や役職の無い組織管理体制をホラクラシーと呼び、組織の効率とアウトプットをを改善する効果があるとされています。
  • ・他方ではホラクラシーのデメリットも存在し、今後ホラクラシーが浸透するか否かはザッポスの成功にかかっていると言っても過言ではないでしょう。