希少性の原理

マーケティング業界では既に一般的なこの心理学用語ですが、グロースハック事例でもその効果は実証されています。

しかし、やり方を間違えれば思わぬ逆効果を生んでしまうことも事実。

「希少性の原理」を利用したマーケティングの成功例と失敗例を交えながら、正しい「希少性の原理」の使い方を学んでいきましょう。

希少性の原理

「希少性の原理」とは、「モノの数が限られていればいるほど、そのモノを貴重と捉えるようになる」人間の心理を表した原理です。

例えば通販などでよく見る現品(在庫)限りの広告。

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スーパーの広告だって、利用可能な期間を絞ることで希少性の原理を活用しています。

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このように、希少性の原理は日常生活の至る所に潜んでおり、その応用範囲は人気WEBサービスやグロースハックで有名なウェブサイトやアプリにも及んでいます。

本文以下では、希少性の原理で成功した例に加え、失敗した例も紹介することで、希少性の原理の活用にも緻密な戦略が必要であることを論証致します。

成功例①Facebook

フェイスブックは元来、ハーバード大学限定のソーシャル・ネットワーキング・サービスでしたが、その希少性が話題を呼び、その他アイビーリーグ系大学への進出を経て一般的なユーザーでも利用することが可能になりました。

フェイスブック同様、Beta版と称してまずは一部のユーザーのみに利用を認め、最高の利用体験を得た後に評判を口コミで広めてもらってから一般向けにローンチするアプリやウェブサービスも今では多く見受けられます。

成功例②Pinterest

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以前に「ピンタレストのユーザー獲得&定着率UPに隠された5つのグロースハック」の中でお伝えしたように、Pinterestはローンチ当初、「招待状をリクエストして、数日後にメールで届く招待状を開封する」ステップをあえてユーザー獲得段階に設けていました。

選ばれし者しかサービスを使えない印象を与えたことで、プレミアム感の演出に成功した事例です。

成功例③mixi

日本におけるSNS業界成長の立役者 mixi も、希少性の原理を活用して成功した1例です。

Pinterestとは異なり、友人を通じた完全招待制にしたことで、希少性の原理に火をつけました。

成功例④Groupon

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クーポンサービス Grouponは、各クーポンの有効期限を秒単位で表示しています。

「時間が立てば無くなってしまう」という危機感を煽ることで希少性を演出した事例です。

成功例⑤Facebookハグアプリ

数々の人気フェイスブックアプリを生み出してきたAnkur Nagpal氏による「ハグアプリ」。

アプリ自体は「フェイスブック上の友人に感謝や愛情を込めてハグを送る」というなんの変哲もないアプリでしたが、「1日20ハグ」という制限を設け、以下の画像のような形で使用制限を可視化したことでユーザーのエンゲージメントを大幅に向上させたとNagpal氏は公表しています。

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(「1日の制限の75%を消費しました」とユーザーに喚起)

ユーザー獲得(Acquisition)に希少性の原理を応用するサービスが多い中、エンゲージメントを高める使い方としても重宝することが分かりますね。

更にNagpal氏は、「実際に制限はかけなくてもいい」と、制限が存在することを訴えながら実際には制限をかけないことでユーザーのエンゲージメントを助長する荒業も推奨しています。

バレた時の批判は大きそうですが、それほど希少性の原理は強く働くということなのでしょう。

参考:7 Lessons Learned in Hacking the Facebook Platform from @ankurnagpal

成功例⑥Expedia

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エクスペディアでは、航空券の残席状況を「この値段で手に入るのはあと○枚のみ」という形式で表示しています。希少性の原理を利用した典型例と言えるでしょう。

失敗例①Mailbox

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Eメール 管理アプリのMailboxは、一般公開前にサインアップを募り、早い者勝ちで徐々にアプリを提供していく形で希少性の原理を活用しました。

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(「徐々に規模を広げていきます」と公表したはいいものの…)

しかし、蓋を開ければアプリの利用を待ち望んだユーザーが溢れかえり、ユーザーの不満は募るばかり。上記の画像付きで慌てて公開した製作者ブログがかえって不満に火をつけ、しまいにはアプリを手に出来なかったユーザーが使ってもないのに悪評をネット上に流す結果に

希少性の原理も、使い方によっては諸刃の剣になりうることを実証する、反面教師にしたい一例です。

失敗例②Tempo

スケジュールアプリのTempoは、予想外の人気に対する対応策の一環として、ウェイティングリストへのサインアップをユーザーに要請しました。

Tempo制作サイドは「(技術的に供給が追いつかなくなった結果であり、)意図的なものではない」ことを公表していますが、この施策によってユーザーの不満は爆発。「最大で10万人のユーザーを失った」と、希少性の原理のネガティブな影響についても語っています。

参考:HOW TO BOOST DESIRE USING THE PSYCHOLOGY OF SCARCITY

最後に

「希少性の原理」は消費者心理をついた効果的なマーケティング手法である一方、使い方やタイミングによっては意図に反する効果を招く恐れも存在します。

むやみやたらにユーザーを焦らすのでは無く、適切な戦略やユーザーの意識調査に基づいた応用が重要と言えるでしょう。