コミュニティマネージャーという業種をご存知でしょうか?
海外の企業では一般的なこの職種ですが、まだ日本では馴染みの無い方も多いはずです。
コミュニティマネージャーとは、その名の通り、サービスを取り巻く関係者が集まるコミュニティを管理する立場を指します。
「強いコミュニティは持続的なグロースの基盤」という考えに即した役職であり、特にローンチ前後や新たな拠点にサービスを展開する際には重要な役割を果たします。
本日は、そんなコミュニティマネージャーが取り仕切るコミュニティ作りに欠かせない心得や注意点を、私が様々な事例を観察しながら走り書きを続けてきたノートの中からまとめて21個ご紹介致します。
1~12までは意識・戦略的な部分を中心に、13~21はコミュニティ作りに役立つ小技をご紹介しています。
1.コミュニティ無しに成長は無い
BtoB、BtoC、ニュース、エンタメ、ショッピング、健康。
どんな分野においてもコミュニティは成長の礎になります。
特にソーシャルメディアの著しい発達によって個人の発信力と個人間の情報交換量が高まる昨今、どんなにクローズドなサービスでも、サービスを形成するコミュニティ内でユニークな文化を醸成する重要性は高まっているのです。
2. コミュニティは共感の基に生まれる
コミュニティに属するメンバーを繋ぐ最大の接着剤が、共通の目的意識やあるテーマに関する意見や趣向の一致を含む共感です。
例えば分かりやすいところだと、2ちゃんねるや米国版2ちゃんねるとも呼ばれるRedditは、どちらかといえば社会不適合系で、世間を斜に構えて見ているギークな男性ユーザーを中心としたコミュニティを形成しています。
両サービス共に、とても現在のデザインの潮流を意識しているとは思えないUIではありますが、それもユーザー間に共通して存在する趣向を的確に捉えていると言えるでしょう。
提供するサービスがどんな共感をどのようにもたらすのか、事前に仮説を構築し、それに基づいたUIや機能の設計を行うことが重要です。
3. 時間がかかることを自覚する
ローマコミュニティは一日にしてならず!
グロースハックの代名詞としても知られるAirbnbは、1つの都市に焦点を絞り、ユーザーは何を好むのか、嫌うのかを1~3年間かけて探求しました。
爆速でユーザー数を増やしていく誤ったイメージが未だに強い「グロースハック」ですが、多くの急成長サービスの土台は、時間をかけて醸成したコミュニティにあるのです。
4. スタート地点を決める
「コミュニティ作りはサービス内で起こっているんじゃない!サービス外で起きてるんだ!!」
と誰が言ったかは分かりませんが、ソーシャルメディアが乱立する昨今において、ウェブサイトやアプリ内だけでコミュニティを築こうとしても、コミュニティが自然に拡大していくことは期待出来ません。
まずは現状で自社サービスがどのソーシャルメディアで最も話題にあがっているのかを突き止めましょう。
たとえ絶対数が高くなかったとしても、ローンチして間もないサービスにとって1つ1つのシェアは非常に重要な意味を持ちます。貴重なリソースが集中するソーシャルメディアを発見し、積極的にユーザーとコミュニケーションを図っていきましょう。
ソーシャルメディアに限らず、最も利用者数の多い地域やセグメントに絞ってスタート地点を決めることも有効です。
5. 今あるコネクションを最大限活用する
サービスアイディアを練る際に、身の回りでサービスを使っている友人を想像出来るかどうかは、開発に向けたゴーサインを出す上で非常に重要な意味を持ちます。
この考え方はローンチ後も同様に当てはまり、コミュニティ作りを始める際にはぜひとも想像した友人に実際に使ってもらえると良いでしょう。
知人友人によっては思うように率直に意見が吸い出せないといデメリットも存在しますが、①純粋にコミュニティメンバーの母数が増える、②アイディア時点での仮説の正確性が検証出来る、③フィードバックが得やすい、④シェアにつながりやすいなど、メリットは非常に多いはずです。
6. とにかく耳を傾ける
コミュニティ作りに絶対に欠かせない作業が、直接ユーザーにインタビューを実行することです。
データ分析を通じて定量的な観点から得る情報も重要ではありますが、ユーザーの母数が少ない分、ローンチ前後は定性的な分析がより重要な意味を持ちます。
メールや選択肢形式のアンケートなど、調査には様々な手法が存在しますが、ユーザーの考えや行動を最もダイレクトに伺えるインタビューが最も推奨されることは言うまでもありません。
リーンUXの教えに基づき、コミュニティマネージャーのみならず、デザイナーやエンジニアも一緒になってインタビューを実行することが重要です。
7. ユーザー数の少なさは実験のチャンスと捉える
ユーザーの数が少ないということは、調査結果に応じて実装する改善施策がユーザー獲得や定着率に及ぼす影響も少なく、その分思い切って様々な施策を実験出来る良い機会と捉えることが出来ます。
8.ユーザーの自発性を尊重する
走り書きのため、ソースが誰であったか定かではありませんが、何かの記事で、「コミュニティの方向性はユーザーが自発的に形成するもので、作為的な方向性の決定は、無意味などころか害をもたらす危険性の方が高い」という趣旨の発言を目にしたことがあります。
私が勝手にオンラインコミュニティ最大の成功例と位置づける2ちゃんねるも、あれだけ様々なトピックが乱立し、方向性も何もないと言って良い造りであるにもかかわらず、次から次へと面白いアイディアが生まれ、愛着を持ったユーザーが後を絶たないのは、まさしく自発性を尊重した結果であると言えるのではないでしょうか。
9.データでコミュニティの成熟度を測る
定性的なデータはもちろん、定量的なデータもコミュニティ作りには欠かせません。
コミュニティ作りに注力する際には、必ずエンゲージメントに関する指標(例えば定着率、月間の投稿数、ログイン時間など)を中心に解析作業を進めましょう。
コミュニティ規模の変化ばかりに目が眩み、エンゲージメントを放り投げたまま話題性のみでサービスの規模が拡大すれば、グロースもすぐにその勢いを止めてしまいます。
Facebookとの連動で一気にユーザー数を拡大したZyngaの成長に翳りが見えたのも、コミュニティ形成を疎かにし、エンゲージメントを高め切れなかったことが最大の原因です。
10. 対等な対話を心がける
健全な、持続性の高いコミュニティは、得てしてメンバー間の関係性がフラットであるという特徴を持ち合わせています。
サービスを提供する側がただ単に発信を続けることも、メンバー間の中に(例えば注目度などで)明らかな格差が生まれることも、理想的なコミュニティのあるべき姿とは言いがたく、完全なフラットが無理だとしても、誰もが同じ土俵に立って存在しているとユーザーに意識させる仕組みづくりが必要です。
11.仮想敵国を作る
歴史を振り返ると、国を統率するリーダーは、国民の士気を高める為に「仮想敵国」を作り、プロパガンダ等に多用する事例が多く見受けられます。
仮想敵国を作る背景の1つには、他国との違いや優位性を明確にし、コミュニティ内のつながりをより強固にする目的が存在しており、シチュエーションは大きく異なれど、オンラインサービスのコミュニティ作りにも同様の戦術を応用することが可能です。
例えばAppleがPRに用いるクリエイティブを見てみると、同様のプロダクトを提供するマイクロソフトに対して敵意剥き出しで挑んでいることが分かります。
ネット業界ではありませんが、PepsiとコカコーラのCMを見てみても、敵を作ることで自社のコミュニティの結束力を高めようとする思惑が見え隠れしています。
あからさまな敵対心がいつも効果的とは限らず、むしろリスクに変わる可能性も否定は出来ませんが、ユーザーに類似サービスを使わないほうが良い理由を明確に提示することで、コミュニティの絆は強まる傾向にあると言えるでしょう。
12.コミュニティマネージャーを擁立する
「コミュニティを作っています」と言うより、「コミュニティマネージャーです」と言った方が、単純にかっこいいだけではなく、責任感も沸いてくる気がしませんか?
実際多くの人間は単語1つでモチベーションに大きな変化が現れる単純な生き物であり、本気でコミュニティ作りに取り組みたいのであれば、それなりの称号を与えることも考慮に入れるといいでしょう。
13. 新規ユーザーが溶け込みやすい環境を作る
*ここからは、コミュニティ作りに必要な小技を中心にお伝えします。
「10.対等な対話を心がける」上で、新規ユーザーが溶け込みやすい環境を作ることは非常に大切です。
必ず意識したい以下の3点に加え、nanapiが提供するアンサーのように、投稿に対してレスポンスが来やすい環境を整えてあげる努力は欠かせません。
・短く、意味のある入力事項しか求めない登録フォーム
・すぐに使い方を理解出来る直感的且つ自然なチュートリアル
・ユーザーの疑問解決に繋がるFAQやコンタクトページ、そしてライブチャット機能の設置
14. 自己顕示欲を満たす
強いコミュニティ最大の特徴である高いエンゲージメントを保つ為に、ユーザーの自己顕示欲を満たす為の施策は有効です。
例えば投稿型サービスであれば、サービスのクオリティをアピールする為の人気コンテンツばかりを全面に押し出すのでは無く、新着コンテンツの視認性も併せて高めることで、より多くのユーザーの自己顕示欲を高めることが可能です。
15. リワードを与える
金銭的なインセンティブを与えてサービスを成長させることはかっこ悪い、クリエイティブじゃないというのが私の基本的な考えではありますが、やはり何かしらのリワードが贈られてくればユーザーとしては嬉しいもの。
不定期でも、1年に1回でも、コミュニティの成長に貢献したユーザーに対してギフトを贈ることは、必ずしも悪い施策ではないといえるでしょう。
ギフトの内容や贈り方によっては、そのストーリーがソーシャル上でシェアされ、結果としてサービスのブランディング及びグロースに大きく貢献する可能性も秘めています。
16. ストーリーを売る
「14. 自己顕示欲を満たす」、「15. リワードを与える」に関連して、サービスから生まれた夢のあるストーリーを効果的にPRすることは非常に効果的なコミュニティ・ビルディング施策と言えます。
例えば、Facebookを通じて生き別れた家族に再開出来た話、Facebookを通じて夢の企業に就職出来た話、Facebookを通じてプロポーズに大成功した話などなど、Facebookはまさに夢のあるストーリーの宝庫です。
(Facebookが現状の地位を確立した今では大した効果を持ちませんが、)これらのストーリーを自社サービス及びその他メディアが取り扱うことで、「Facebookって良いサービスなのかも」と未登録ユーザーの心に好印象を植え付けるだけでなく、利用中のユーザーに対しても、「こんな夢のある出来事が生まれるコミュニティに属することが出来て幸せ」という幸福感を認知させることが可能です。
17.オフ会を開く
インターネットを通じての交流が当たり前の存在になった今だからこそ、オフラインでの繋がりはその重要性を増しています。
mixiのようにユーザー同士が自然な形でオフ会を開けばそれに越したことはありませんが、まだそこまでのコミュニティ意識が芽生えていない場合には、サービスの提供側が進んでオフ会を主催することも効果的です。
オフ会と聞くとBtoCサービスを思い浮かべてしまいますが、BtoBサービスでも、セミナーの開催等を通じて、コミュニティをより強固なものに変えていくことは十分に可能であると言えるでしょう。
18. コミュニティの動向を可視化する
「話には聞いたことがあるけど、実際の中身はどうなってるんだろう」
「今更登録しても、知り合いもいないし、コミュニティに溶け込めるか不安」
そんな複雑な思いを抱えるユーザーは、想像以上に多く存在します。
こうしたユーザーを取り逃さないために、コミュニティ内のやりとりは、可能な限りオープンに公開することが懸命です。
「13.新規ユーザーが溶け込みやすい環境を作る」に通じるコミュニティのオープン化は、未登録ユーザーの不安を取り除く上で大きな役割を果たします。
19. 「にぎわい」を演出する
ローンチ当初の多くのサービスが、過疎化に苦しみます。
サービスを始めたばかりの段階で巨大な数のアクティブユーザーが存在するほうがおかしい訳ですが、初めて訪れたユーザーの立場からすれば、にぎわいの無いコミュニティほど不安をかき立てるものはありません。
単純にサービス提供側がユーザーになりすましてコンテンツの投稿を行うばかりではなく、①ローンチ前に投稿を募る方法を考える、②表示方法を考えるなど、にぎわいを演出する為に出来ることは他にもあるはずです。
グロースハックジャパンでも紹介したクラウドワークスの事例は、表示方法を考える際にとても参考になるでしょう。
20. セグメントによってアプローチを変える
ソーシャル、モバイルと並んで、近年重要視されているのがカスタム化。
ユーザーの年齢や性別等の基本情報のみならず、入会時期やログインの頻度に併せてカスタマイズされたメッセージを届けることで、「このコミュニティは私のことをしっかり考えてくれている」という愛着心を醸成することが可能です。
メルマガ1つにとっても、その分工数はかかりますが、それぞれのユーザーに対してカスタマイズされたメールを送ることで、その後のエンゲージメントに好影響をもたらすことが期待出来ます。
21. 個人名義のアカウントを通じて連絡を取る
「Jelly team<info@jelly.co>」
「Biz Stone<biz.stone@jelly.co>」
この二つのメールが届いたとき、Twitter及びJellyの創始者Biz Stone名義で送られてきた後者を開封したくなるのは当然でしょう。
両方とも一度に大量に送られてきたメルマガであることには変わりませんが、名義にパーソナルなタッチが加えられているか否かだけで、ユーザーの反応は大きく変化します。
コミュニティ意識の大本にあるのは人と人との繋がりであり、機械的な文言は極力避けることが推奨されます。
最後に
21も書くと、本当に疲れます。
growth hack japanの運営サイドも、今後コミュニティの更なる情勢と拡大を目的に、今後はオフ会なども企画中のようです!
読者の皆様にお会いし、直接ご意見を伺うことで(そんな堅苦しい感じではないらしいですが)、今後のコンテンツの内容等にも活かしていければと思います。
楽しみです!