ピヴォット。
それは多くの創業者にとって、迷いや失敗を匂わせる汚らわしい言葉。
しかし、4つに3つのスタートアップが消えていく中で、私たちはこの言葉に決して背を向けるべきではない。
私たちは変化を前向きに捉えるべきであり、経験から生まれた変化は会社、そしてユーザーにとって良い結果をもたらす可能性を秘めていることを自覚すべきだ。
—Suberb共同創業者 Eddy Lu
本日は、SNSと位置情報を組み合わせたアプリ Superb(旧名:Grubwithus)の共同創業者 Eddy Lu氏がNextWebに寄稿したピヴォットに関する記事(英語)を翻訳して紹介します。
Lu氏が自身の経験から語る「ピヴォットを成功させる5つの鍵」は、特にPMF(プロダクトマーケットフィット)やマネタイズ等の重要な局面の前に資金調達を行うスタートアップは必見の内容です。
「スタートアップはバスケのようなもの」
ピヴォット。
それは多くの創業者にとって、迷いや失敗を匂わせる汚らわしい言葉。
しかし、4つに3つのスタートアップが消えていく中で、私たちはこの言葉に決して背を向けるべきではない。
私たちは変化を前向きに捉えるべきであり、経験から生まれた変化は会社、そしてユーザーにとって良い結果をもたらす可能性を秘めていることを自覚すべきだ。
私たちの最初のプロダクトであるGrubwithusは、当初このアプリを通じて見知らぬユーザー同士が実世界で繋がり、人気レストランで食事を共にすることを目的に作られました。
反響は非常に良好で、投資家もこの斬新なアイディアに飛びついてくれたし、メディアにも大々的に取り上げてもらったし、とにかく万事順調だったんです。
しかし、2年にわたって仕事に精を出し、グロースを重ねた結果、このまま「見知らぬユーザー同士が実世界で繋がり、人気レストランで食事を共にする」サービスを継続したとして、巨大且つ持続可能なベンチャービジネスとして存続するにはあまりに障壁が多いことを思い知ることになります。
ユーザーは深いコネクションを求めていて、テクノロジーを使ってコネクション作りを容易にするというアイディアに賛同はしてくれましたが、「実際に会う」までのハードルを押し下げる必要があったのです。
何ヶ月間にもわたって自己分析、議論、テストを繰り返した結果、私たちは「行きたい場所の情報を集めて、同じ場所に行きたいと考えているユーザー同士をつなぐ」新アプリSuperbへのピヴォットを(2014年の4月に)決めました。
会社を始めると言うことは、リスクを取り、セカンド・チャンス、ひょっとすればサード、フォース、フィフス・チャンスを物にすることです。
私が頼りにしているベンチャーキャピタリストはかつて「スタートアップはバスケットボールのようなもの」だと語ってくれました。
バスケでは6回ファールを取れるんだから使い切ってしまえば良い。一度もファールを取られていないと言うことは、アグレッシブになりきれていないということ。ルール上リスクを取ることは許されている一方で、第1クオーターでその全てを使い切ってはいけないということです。
ほとんどのスタートアップは生きるか死ぬかの決断に迫られることはありません。
新たな動きを試して失敗してしまったのであれば、その失敗を修正することを恐れてはいけないのです。
必要以上に資金調達すべし
ここでは、私が考えるピヴォットを成功させる5つの鍵を紹介します。
資金調達は難しく、人を惑わせるものですが、資金がショートするということはスタートアップの死を意味します。
初めて資金調達を行った時、私たちは1億円を目標に掲げました。
ある一流のVCからは数億円のオファーも頂きましたが、初めて起業を経験する多くの創業者同様に、私たちも1年半後にはより高いバリュエーションを得ることを見越して1億円以上の資金調達は見送ることにしました。
幸いなことに、私たちはあまり大きな過ちを犯すことも無く、順調にシリーズA投資も受けることが出来ましたが、もしもう一度資金調達をやり直せるのなら、貰えるときに貰っておくだろうと今振り返って思います。
実際に過去の経験を踏まえて、シリーズA投資では最悪の事態に備えて必要以上の資金調達を行いました。
私たちがピヴォットした経験からも分かるように、最高のシナリオが現実になることはありませんでしたし(そんなことはほとんど起こらないでしょう)、もし最悪のシナリオを恐れる以上にお金に惑わされることを恐れていたら、この会社は潰れていたでしょう。
適切なパートナーを持つべし
テック業界は、起業のストレスの下にパートナーシップが崩壊してしまうストーリーで満ち溢れています。
私たちがYCに参加した年だけでも、1/3のチームが性格の不一致やプロダクトの方向性による不和によって解散するか共同創業者を失う事態に陥りました。
起業は精神的にも肉体的にも至極ストレスの多い作業です。
最悪の事態を共に乗り切れる適切なパートナー無しに出来ることではありません。
たとえ私たちがピヴォット以上に悪い事態も経験したとしても、共同創業者であるNikhilとDaishinはきっとチームにバランスをもたらしてくれて、共に困難を乗り越えてくれるはずです。
チームを正しく再編成すべし
ピヴォットが変えるのはプロダクトだけではありません。
もしチームメンバーがピヴォットの方向性を信じてくれなければ人材は消耗するし、新たなビジョンにフィットしなければ別れを経験する必要があるのです。実際に私たちがピヴォットを敢行した際も、営業チーム全体を解雇すると言う極めて困難なタスクに直面しました。
士気が低下する他にも、解雇を通じて最も親しい友人達に別れを告げることをピヴォットは意味します。
創業者や会社への忠誠心だけを理由に残留を決めたものの、新たな方向性に満足出来ていないメンバーが居れば、あなたは創業者としてこの問題にしっかりと取り組む必要があるのです。
必ずピヴォットを実行する前にチームを再編成することが重要です。
プランBを持つべし
VCの仕事は投資家に対して利益をもたらすことです。
利益をもたらすということは、単純に勝者を見極めることではありません。
ロスを最小にとどめることも彼らの仕事なのです。
繰り出そうとするピヴォットが必ず成功すると信じたい気持ちももちろん理解出来ますが、そのピヴォットには大きなファイナンシャル・リスクが伴います。
ピヴォットが成功しない最悪の事態を想定することによって、あなたがファイナンスの面でスマートであることをしっかりとVCに示してあげてください。
私たちはSuperbに情熱を持っているし、投資家も私たちが掲げる大きなビジョンを支援しています。
一方で、私たちは自らの資金に対する責任をVCに示す為に最悪の事態をしっかりと議論してきましたし、その内容はバイアウトの可能性がある企業に話を伺いに行くことから、資本構成を変更することまであらゆることに及んでいます。
VCだけでなく、チームメンバーに対しても資金に関する透明性を保つことは非常に重要と言えるでしょう。
投資家の「器」を理解すべし
ピヴォットを迫られたとしても、それまでに既に創業者やチームは果てしない時間を会社につぎ込んでいる。
もしあなたのスタートアップが素晴らしいチームと資金に恵まれているのであれば、あなたのスタートアップは既に一歩周囲から抜きん出ているわけですから、情熱と気力が続く限り立ち止まる理由なんてありません。
Pitnerestだって、Homejoyだって、LyftだってGrouponだってピヴォットを経験してきました。
中途半端な会社を作るくらいなら、ピヴォットした方がよっぽどマシです。
ケースによってはVCからピヴォットへの反対を受けるかもしれません。
しかし、あるVCは以前私にこう話してくれています。
あなたを支える全ての投資家は大きな器を持っている。私たちのことは心配するな。もし私たちが君に投資していなかったら、君と同じような人間に投資を行っていただろう。私たちは皆お金を失ってきたが、その反面で大きな利益も得てきた。だから君がハングリーで、情熱的で居続ける限り、戦い抜け。