「 はじまり」こそ労働の最も重要な部分である

−プラトン

哲学者プラトンがそう語るように、プレゼンテーションで聴衆を惹き付けられるかどうかは最初の60秒で決まると言われています。

そこで本日は、ビズコンや投資家に対するピッチなど、スタートアップの生死を分けると言っても過言ではないプレゼンテーションの正しい始め方を7つ紹介します。

キャッチーなショート・ストーリー

寓話、歴史、小話、パーソナルストーリー。

ストーリーの種類に縛りはありません。

また、紹介するプロダクトと直接関係がある必要もありません。

「なぜこのスピーカーはその話題でプレゼンを切り出したのか」という疑問を聴衆の頭に植え付けた時点で、スピーカーはプレゼンの出来を決める最初の60秒を制したと言って過言ではないのです。

たとえばスティーブ・ジョブズは、スタンフォード大学の卒業式で披露したあの有名なスピーチを、「率直に言ってしまうと、私は大学を卒業していません。今この状況が、私が最も大学の卒業に近づいた瞬間なんです。」という発言から始めています。

「卒業式のスピーチを卒業してない人がする」というギャップで巧みに聴衆の心を惹き付けた素晴らしい例です。

特にパーソナルストーリーを構築する際には、以下の点を意識すると良いでしょう。

・あなたもしくは第三者が今までに直面した課題や問題

・課題や問題に対してあなたもしくは第三者が編み出した解決法

・誰、もしくは何があなたに害/利益を与えたか

・どんなレッスンを学んだか

・そのストーリーから聴衆に何を感じ取ってほしいのか

聴衆をの心を動かす質問を投げかける

プレゼンを質問で始めることで、最初から聴衆のプレゼンに対するエンゲージメントを高め、基本的には一方的であるはずのプレゼンに双方向性を加えることが可能になります。

しかし、何も考えずにただ質問するだけではもちろん聴衆の心は掴めません。

プレゼンを質問で始める最大の理由は聴衆の考えや注意をスピーカーが持っていきたい方向に動かすことであり、その目的に沿った質問を投げかけることが必要です。

たとえばあなたがポータブルWiFi機器に関してプレゼンをするのであれば、「WiFiはよく利用されますか?」という質問よりも、「外出先でWiFiが使えず、困った経験はありませんか?」と、聴衆にポータブルWiFi危機の必要性を意識させるYes/NOクエスチョンが有効でしょう。

「子供の頃何になりたかったですか?」、「このマーケットは昨年から300%の成長を見せています。なぜだか分かりますか?」といったような回答にばらつきがある質問も、内容によっては聴衆の思考を刺激し、前向きな効果を表すかもしれません。

ショッキングな統計や数字

定量的なデータは、内容が各所に分散するプレゼンにアクセントと具体性を与えるという点で、プレゼンを開始する手段として非常に有効です。

例えばスティーブ・ジョブズは、iPad発表の際に、「iPodの販売台数が2億5千万台を突破」、「アップルストアの数が284店舗に到達」、「四半期の来客数が5千万人を突破」という驚くべき数字を連発することで観客の注意を惹き付けました。

印象に残る名言や名台詞

私が本記事をプラトンの名言で始めたのは、気まぐれでも偶然でもありません。

偉人の言葉が持つ重みは聴衆の心をつかむには持ってこいの材料であり、スピーチはもちろん文章の始まりに活用することは非常に有効な手段なのです。

たとえば禁煙グッズに関するプレゼンが、トムソーヤの冒険の作者マーク・トウェインによる名言「 煙草をやめるなんてとても簡単なことだ。私は百回以上も禁煙している」というウィットに富んだジョークで始まったら、思わず食いついてしまいますよね?

驚きや感動を与える画像

プレゼンにおける武器は、あなたの言葉だけではありません。

人間が視力から最も多くの情報を知覚することは様々な実験などから明らかであり、スライドを巧みに使うことでプレゼンの要となる最初の60秒を制する可能性が向上します。

社会問題や病気の解決法を提案するプレゼンではインパクトのある画像が見つかりやすく、特にこの手法は効果的でしょう。

簡潔でインパクトのある動画

画像と並んで、よりダイナミックにインパクトを伝えられる動画を披露することも、プレゼンを始める手段として非常に効果的です。

たとえば5月に開催されたIVS(インフニティ・ベンチャーズ・サミット)の最後を飾った特定非営利活動法人ジャパンハート 代表 吉岡 秀人氏によるプレゼンは、同氏が情熱大陸に出演された際の動画から始まりました。

同IVS札幌のLaunch Padで優勝したWHILLも、プレゼンの最初に動画を披露していますね。

低クオリティの動画はかえって聴衆の心を離してしまうため、動画のクオリティには最大限の注意を払いましょう。

デモンストレーション

プロダクトの魅力を伝えるには、プロダクトを実際に見てもらうことが一番。

多くの場合はもったいぶって途中までデモンストレーションをひっぱるスピーカーが多いですが、プレゼンの冒頭部分にプロダクト・デモンストレーションを持ってくることで、聴衆の心を一気に掴むことも出来るのです。

ソフトウェア系のサービスよりも実際に手元に用意できるハードウェア系プロダクトに向いている印象もありますが、スクリーンシェアリングなどを使えばソフトウェアでも十分メリットを引き出せるでしょう。

最後に

もちろん良いプレゼンは最初の60秒だけで決まるものではありません。

しかし、最初の60秒で観客の心を掴めば、その後の内容をより効率的かつ効果的に聴衆に届けることが可能になります。

本記事で紹介したテクニックを活用して、スタートアップが避けては通れないプレゼンのハードルを乗り越えていきましょう!