Translated by Takaya Uchida
ビジネスを経営している人なら誰しも競合分析の重要性を認めるところだと思いますが、同時に「自社の競合企業はXXをして成功している。自社もXXを実行するべきだ!」という考えに陥りがちです。
しかしながら、競合他社にとって上手くいっていることも自社では上手くいかないことがあるのです。
アジアのユーザーをターゲットとした出会い系アプリPaktorがA/Bテストを必要としたのはまさにこの点です。
本記事はHIPMOBに掲載された記事(原題:A/B Test to Stay Ahead of the Competition)を参考に執筆したものとなります。
Paktorと他の出会い系アプリの比較
Paktorでは表示された異性の写真を気に入れば、親指を立てたアイコンを選択できる仕様になっています。
しかしながら、他の出会い系アプリは表示された異性の写真を気に入ったことを意思表示するアイコンとしてハートマーク、チェックマーク及びメッセージのアイコンを使用しています。
Paktorの開発チームはユーザーのエンゲージメント率(アプリの使用率やいいね!アイコンを押す率)を高めるためのいろんな方法を議論した結果、彼らはある程度自信を持っていいね!アイコンをハートマークに変更することがエンゲージメント率の向上につながるだろうと考えていました。
ハートマークは出会いを求めているというメッセージをより反映しているのみならず、競合アプリはハートマークのアイコンの使用で成功を収めているようでした。
オリジナル ハートマークの使用
オンライン上での出会いが増えるにつれ、出会い系アプリの数も増えています。
どのアプリにも共通していることはコアコンセプトがオンライン上で良い出会いを提供することにあり、全てのアプリにはユーザーが何らかの形で「私はこの人が好みだ」や「私はこの人のことをもっとよく知りたい」という意思表示をできることになっています。
しかし、異性に興味を持っていることを伝えるためにクリックするアイコンはアプリ毎に異なります。
Coffee Meets Bagel Tinder Match.com
このアイコンは出会い系アプリの中で最もシンプルかつ重要なアイコンと言えるでしょう。
ユーザーはこのアイコンをクリックすることによってしか相手と直接やり取りを始められません。裏を返せば、出会い系アプリに取ってはこのアイコンがクリックされなければ、存在意義がなくなってしまうのです。
出会い系アプリのマネタイズ戦略が何であろうと、アプリを定期的に使用して、相手に興味を持っていることを示すアイコンをクリックくれるユーザーが数多くいることが不可欠なのです。
PaktorのA/Bテスト
Paktorはどのアイコンが最もユーザーのエンゲージメントを高めるのかを考えました。
Paktorはハートマークの方が恋人を探すことを描写するのにより適しているだろうと考え、彼らは×マークとハートマークの組み合わせと親指を上に立てたマークと下に立てたマークの組み合わせとでA/Bテストを行いました。
オリジナルのアイコン 新しいA/Bテストのアイコン
その結果、×とハートマークの組み合わせはオリジナルのアイコンと比べて6%もユーザーのエンゲージメントが下がることがわかりました。
これは月当たりに直すと、約26%の収益減を意味していたのでA/Bテストを実行して非常に良かったということになります。
×とハートのアイコンが他の出会い系アプリTinder, CloverやHingeでは上手く機能しているにもかかわらずこのような結果になったのは、アジア人にとってハートマークは露骨すぎる表現なのではないかとPaktorは結論づけました。
Clover Hinge
ハートマークのアイコンはさらにアプリのリピーターを2.3%も減少させました。年間に換算すると11%の収入減になると考えれば大きな損失だと言えるでしょう。
最後に
Paktorは始めはA/Bテストをすることなく×とハートマークのアイコンをアプリに導入するつもりでした。それくらいPaktorは自分たちの考えに自信を持っていました。
「グロースハッカーに必要な素養とは?」や「海外の著名グロースハッカーが必ずおさえる6つのステップ」でも強調してきましたが、グロースハック施策の善し悪しを決めてくれるのはエンジニアやプロデューサーの勘ではなく、A/Bテストやデータ分析の結果なのです。
Paktorの事例から学べることはどんな些細なことでもA/Bテストする価値があるということでしょう。