「来年にはフェイスブックユーザーが今年の2倍の情報を共有して、再来年には来年の更に2倍の情報を共有すると私は予測しています。」

2008年、フェイスブックの創始者マーク・ザッカーバーグはこう述べました。

メディアは半導体の集積密度が2年ごとに倍増すると提唱したムーアの法則に倣い、ザッカーバーグの発言を「ザッカーバーグの法則」として大きく取り上げ、事実としてその後フェイスブックはザッカーバーグの法則に多かれ少なかれ沿った成長の一途を辿ったのです。

しかし、今フェイスブックの前には、自ら生み出したバイラル効果が1つの足かせとして立ちはだかっています。

幾何学的な情報量の増加は、フェイスブック最大の魅力である情報共有を機能不全に陥れる危険性を孕んでいるのです。

増えすぎた情報量

「フェイスブックユーザーが一日に受け取る友人や法人ページの投稿は平均で1日1,500にも相当する。」

今年の8月、フェイスブックが発表した興味深い発言です。

もしあなたが一日に17時間起きているとすれば、全ての投稿を消化するために毎時間88もの投稿をチェックしなければならず、一般的な日常生活を送っていれば消化できるはずのない情報量があなたのフェイスブックには日々舞い込んでいるのです。

更にこの調子で「ザッカーバーグの法則」が続くのであれば、来年、再来年と、あなたのニュースフィードに舞い込む情報は倍々に増えていくことが予想されます。

フェイスブックのグロースハッカー集団が埋め込んだバイラル効果は、ユーザーの受容可能量をはるかに凌ぐ情報量を生産し、情報共有というフェイスブック最大の魅力に傷をつけかねない程度にまで達したのです。

フェイスブックが編み出した解決法と課題

もちろんフェイスブックは既に「増えすぎたコンテンツ」への対処に取り組んでいます。

フェイスブックは現在も絶えずニュースフィードのアルゴリズムに改善を加え、ニュースフィードに適切な情報が流れるよう、ユーザーの行動履歴やつながりのある友人の行動を正確に解読する努力を続けているのです。

しかし、もちろんアルゴリズムはいつもあなたが欲する情報を届けてくれる訳ではありません

読者の皆様も、一時的にフェイスブックのヘビーユーザーと関係を強めた時、欲しくもないのにその人の情報が次から次へと流れてきた経験はないでしょうか。

不完全なアルゴリズムを原因にあなたは大切な情報を見逃しているかもしれず、フェイスブック最大の魅力である情報共有は今にも機能不全に陥る可能性を孕んでいるのです。

モバイル時代ゆえの苦悩

一昔前、つまりデスクトップでの閲覧がSNSの主流だった時代には、フェイスブックの過大な情報量がもたらす不便も些細な弱点でしかありませんでした。

記事の共有も、近況の報告も、写真の共有も、更にはゲームだってフェイスブックという1つのプラットフォームが全てを解決してくれた(少なくともそういった印象がユーザーの中には根付いていた)のです。

しかし現在ではどうでしょう。メッセージを送りたいならLINEやスナップチャット。画像や記事をを共有したいならインスタグラムやピンタレスト。ゲームだってネイティブアプリの発達により、ソーシャルゲームプラットフォームの必要性はますます薄れています。

スマートフォンやスマホアプリの普及により、フェイスブックの牙城は崩れかけていると言っても過言ではないのです。

フェイスブックの未來

本記事で紹介したフェイスブックの抱えるリスクは、なにもフェイスブックのプレゼンスが近い将来急降下すると示唆するものではありません

フェイスブックは既に多くの人の日常生活の奥深くまで浸透しており、今後も知人間の情報共有プラットフォームとして力を発揮していくでしょう。

しかし、フェイスブックの独壇場を拝めなくなるのは時間の問題かもしれません。

アプリを使い分けるコストが減少する昨今、ユーザーは欲しい機能が全て1つにまとまったフェイスブックのようなプラットフォームよりも、各機能を極めた個別のアプリを好む傾向にますます傾いているのです。

もちろん各機能の最適化はフェイスブックにとって理想の結末ですが、高い技術を持ったスタートアップが数々誕生している中で全ての機能を極めることは非常に難しいと言えるでしょう。

今フェイスブックに最も求められているのは増えすぎたコンテンツの整理であり、この課題は絶え間ないアルゴリズムの改善によってのみ解決され得るのです。