投資家はあなたのビジネスアイディアに投資などしてくれません。

アイディアは失敗しない裏付けがあって初めて価値を持ち、投資家はその「裏付け」を求めているのです。

投資家が求める裏付けといえば、技術力や市場・競合調査など様々ですが、多くの起業家が忘れがちなのはUX(ユーザーエクスペリエンス)や顧客開発の重要性新規事業に失敗したくなければ、ユーザーが製品に対してどのような感想を持っているか、どう改善して欲しいか、そもそもユーザーはその製品を必要としているのかを、ローンチ前に検証する必要があるのです。

リソースの少ない起業前に実行することはなかなか難しいことですが、見込みユーザーに関する情報が圧倒的に少ないスタートアップにこそUX検証は必要不可欠。こうした事実を踏まえ、起業を夢見る皆様に提案したいのが、リーン・スタートアップ・ムーブメントから派生した方法論である「Lean UX(リーンUX)」です。

Lean UX3つの特色

そもそもリーン・スタートアップとは、 ユーザーが必要としていないサービスや商品を制作することに伴うコストを最小化し、少ない資金と短期的なサイクルの中で新規事業の成功を導くマネージメント手法です。

リーンUXは、リーン・スタートアップの考え方をそのままUXの検証に当てはめた手法であり、リソースや確実性の少ないスタートアップが失敗しない為に最適な開発法と言えます。

まずは、リーンUXを特徴付ける3つの特色を見てみましょう。

①ユーザー命

リーンUXはユーザーの声無しに始まりません。ユーザーの声を基に改良を重ね、初めてローンチにたどり着くのです。

②スピード命

迅速かつ短期的なPDCAサイクルの中でUXの検証と改良を実行します。検証に完成品を用意する必要は無く、プロトタイプ1つで検証に乗り出し、ユーザーの声を基に徐々に改善を加えていくのがリーンUXの基本です。完成品は、検証が完了したことを前提に、ローンチまでに用意できれば問題ないのです。

③コラボ命

デザインチームは、エンジニアやプロダクトマネージャーと密接に協力してUXの改善を行います。いつでも身のある議論や相談が開始できるように、隣同士座ってタスクをこなすことも推奨されています。

要するに、ユーザーの生の声を基に、プロダクト開発に携わるメンバー全員が一体となって、迅速かつ短期的な改善サイクルを回しながらUXを改善するのがリーンUXの基本というわけです。

Lean UX実践のための4つの基本ステップ

リーンUXのイロハがわかったところで、リーンUXを実践するための4つの基本ステップをご紹介します。あくまで基本ステップになりますので、基本に忠実であることを前提に、実践しながら皆様なりの実践方法を発見頂ければ幸いです。

①チーム内の壁をぶち壊す

上記の「コラボ命」の説明にもあるように、迅速かつ短期的なサイクルで改善を繰り返すリーンUXでは、チーム内に存在する壁が大きな障壁になります。ディベロッパー、マーケティング担当、プロダクトマネージャー、デザイナー、戦略立案者、QAなどなど、開発からサポートに至るまでのプロセスに関わる全ての担当者の垣根を取り払いましょう

事前に積極的な意見交換を行うことで、開発初期段階よく起こりがちなデザイナーと他グループの大きな感覚のズレを修正する手間も省くことが出来ます。また、ユーザーの生の声がチーム全体に行き渡りやすくなり、真のプロダクトマーケットフィット*に到達することが容易になります。

*プロダクトマーケットフィットとは、最適な市場に位置し、その市場を満足させられる最適な商品を持っている状態を指します。

②スケッチ、スケッチ、スケッチ

プロトタイプは何も実際にプログラミングされている必要はありません。UIのイラストを鉛筆で紙に書き込むことから検証を開始すれば、ニーズの無い商品に大きな労力を割く必要はなくなります。デジタルでプロトタイプを制作する際も、最初から利用可能な状態に仕上げるのではなく、イラストレーターやHTMLでUIの設計を描くことから始めましょう。

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また、リーンUXにおいてスケッチは何もデザイナーだけのタスクではありません。検証プロセスを通して、全ての担当者を招いたデザインワークショップを開催しましょう。言葉では伝わらないことも、スケッチを利用すればチーム全体の共通認識を高めることが可能です。しかし、ユーザーの声を重視するリーンUXにおいて、ユーザーが実際に利用することのない構成図の作成や議論に時間を割くことはあまりオススメ出来ません。

デザインワークショップの基本ステップは、①スケッチ(検証結果に基きデザインの改善案を提出)、②プレゼン(チームメンバーと共有)、③批評(各方面からの意見を出し合い、ユーザーの声に基づいた妥協点を抽出)です。「イラレ使ったこと無い」、「イラストなんか描けない」なんてメンバーにも、円と正方形と長方形さえ描ければどんなインターフェイスも描けることをしっかり伝えてあげましょう。

③リサーチは必ずチームで行う

いくらリサーチャーがユーザーの生の声を届けても、その声はリサーチャーというフィルターを通して他のチームメンバーに届けられます。最初に伝えた言葉が全く違うものに変わってしまう伝言ゲームと同じことです。

経験のあるリサーチャーがリサーチの内容や手法を設計した後は、エンジニアを含む全てのメンバーが実際にユーザーの生の声を聞く機会を作りましょう

④正しいメトリックを計測する

ローンチ間近には、ユーザーが実際のプロダクトを体験した上でフィードバックを回収する必要があります。基本的な統計やテスト手法を理解しておいて損はないでしょう。

ただし、ユーザーの声を基に改善を重ねても、間違ったデータを計測していてはいつまでたっても成果はあがりません。グロースハックでもお馴染みのAARRRを利用して、正しいメトリックを計測しましょう。

それでも効果が見えない場合には、テストユーザーの声を疑う前に、まずはユーザーの声を基に建てた仮説に誤りがないかを再検証しましょう。

サマリー

  • ・UXの検証は、あなたのビジネスアイディアの裏付けに必要不可欠です。
  • ・リーンUXは、見込みユーザーに関する情報とリソースがが圧倒的に少ないスタートアップに最適な検証手法です。
  • ・①ユーザー命、②スピード命、③コラボ命がUXの基本です。
  • ・リーンUXを初めて実践する際には、①チームの壁をぶち壊し、②スケッチを繰り返し、③チーム全体でリサーチを行い、④正しいメトリックを計測するという4つの基本ステップを心がけましょう。