「メール・マーケティング=時代遅れ」

大きな間違いです。

ツイッターやフェイスブックを始めとするソーシャルメディアがマーケティング・チャネルとしての地位を確立する今日でも、Eメールは無視できないマーケティングツールの1つであることに間違いありません。

「メール・マーケティング」と聞くとどうしても旧来のマーケティングをイメージしがちですが、グロースハックで知られる有名サービスでメールをマーケティングツールとして活用していない事例はないに等しいと言っても過言ではないのです。

本日は、しばしばその重要性を見落とされがちなグロースハックツールとしてのEメール3種類を、FacebookとeBayの事例を交えてご紹介致します。

STEP①ドリップキャンペーン

Eメールをグロースハックに応用する上で始めに行うのが、「ドリップキャンペーン」と呼ばれる施策です。

ドリップキャンペーンとは、蛇口から滴り落ちる水滴(ドリップ)のように、一定のタイミングでユーザーに届けられるメールキャンペーンを指します。「一定のタイミング」は定期的でも不定期でも構いませんが、以下の条件を順守していることが重要です。

最大の目的は「習慣化」

ドリップキャンペーン最大の目的は、メールの受信を習慣に変えることにあります。「あれ、そろそろ来ても良い頃なのに…」、そうユーザーに感じさせた瞬間に一気にユーザーとの溝が埋まると言っても過言ではないのです。

しかし、たいていのマーケティングメールは、マーケティングメールが単なる「売り場」と化してる、顧客との関係構築がままならない状況で売りにかかっていることの2点によって、実際に「習慣化」する前に配信停止に追い込まれてしまいます。その解決策となりうるのが「1通1ゴール」のルールです。

1通1ゴール 

「1通1ゴール」のルールは、メールの意図を明確に絞り、顧客との距離をステップ・バイ・ステップで徐々に縮めていくためのルールです。

以下の例を応用すれば、①マーケティングメールが単なる「売り場」と化すことも、②顧客との関係構築がままならない状況で売りにかかってしまう可能性も大幅に減少します。

*各ゴールに1通以上のメールを要する場合も考え得るため、以下では「Round」という表現を使用しています。

【Round1:信頼構築】

  • ①有料商品を売りにかからない
  • ②無料で有益な情報を与える
  • ③ソーシャルプルーフを与える

いきなりレベニューに直結させるのではなく、まずは信頼関係の構築からはじめましょう。

②に関しては、ハウツーガイドや無料コンテンツの紹介を、③に関しては(例えばFacebookログインで情報が存在する場合)ユーザーの友人がどのようにサービスを利用しているか紹介するなどを行ってもいいでしょう。

例えばFacebookは、ユーザー登録を済ませたばかりのユーザーに、メールで「Facebookを最大限活用する3つの方法」を紹介しています。

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通販・オークションのeBayも、商品の押し売りはせず、まずはハウツーメールを送信しています。

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【Round2:顧客化】

  • ①新規コンテンツのアップデート
  • ②(通販の場合)手軽に購入できる間口商材の紹介
  • ③利用状況に応じたカスタム通知

Round1で構築した信頼関係を更に醸成するのが「顧客化」です。特にショッピングサービスの場合は、低価格商品を販売できるか否かでユーザーとの関係が本質的に変化します。

③に関しては、初回ログイン時に得た顧客情報を基にタイムリーかつカスタマイズされた情報を提供することで、顧客との距離がぐんと縮まることが期待できます。登録以降ユーザーから音沙汰がない場合には、代表者を名乗ってフィードバックやアップデートを求めるメールマーケティング手法も存在しますが、最近ではそれも一般的になってきたため、むしろ逆効果の可能性も存在します。必ずA/Bテストを実施ましょう。

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(Jellyをダウンロードしたまま放置したところ、

Twitter創始者のビズ・ストーンからアップデートを要請するメールが届きました)

eBayは、ドリップキャンペーンのRound2で以下のようなメールを送信していました(古いメールを掘り起こしています)。価格を全面にアピールしたメルマガではなく、幅広い品揃えをアピールすることで、まだまだメルマガの受信もサービスの利用も習慣化していないユーザーに「押し売り感」を感じさせないための対策であると受け取れます。

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【Round3:アップセル】

  • ①フリーミアムサービス・商品の紹介
  • ②利用状況に応じたカスタム通知

信頼構築、顧客化の次に初めてやってくるのが、皆様が頻繁に目にする所謂「メルマガ」と呼ばれるマーケティングメール。マーケティングメールの質に依存することは確かですが、事前ステップを踏むか踏まないかでアップセルメールの印象も大きく変わります

eBayは、ドリップキャンペーンのRound3で以下のようなメールを送信していました。Round2のメールと比べ、値段や実際の商品イメージを露骨に表示したり、Round1のドリップメールに比べ、より「商売の匂い」が感じられます。

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継続的に続くアップセルメールの配信停止率を押し下げるために、メルマガの質と量の検証・改善は絶えず行いましょう。

STEP②イベントメール

イベントメールは、ユーザーが特定のイベントに遭遇した際に送られるマーケティングメールです。

イベントメールはフェイスブックがリテンション最適化に活用したグロースハックチャネルの1つに挙げられます。友人申請、メッセージの通知、投稿へのコメント、いいね!などなど、あらゆるアクションをEメールと連動することで、注意関心を引き寄せ続けることに成功しました。

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(Facebookで友人が投稿にコメントした時のイベントメール)

同様のサービスが多数存在する中、フェイスブックのまね事ではむしろユーザーの苛々を助長することになり兼ねませんが、リテンション最適化にEメールが不可欠なことは言うまでもありません。実際に、フェイスブックは急成長を遂げた今でも通知機能のデフォルトをオールONに設定しています。

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TYPE③ワンオフメール

ワンオフメールは、ある目的のためだけに作成・送付されるマーケティングメールです。

  • ・サービス提供母体が何らかの節目の年を迎えた時
  • ・賞を受賞した時
  • ・新サービスをリリースする時
  • ・規約に変更があった時

などのタイミングで、必ずしもアクションを求める訳ではありませんが、継続的な信頼関係を築く上でワンオフメールは重要な役割を果たします

最近だと、フェイスブックが10年目を迎え、企業ページを所有するユーザー向けに感謝のメッセージを送っています。

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eBayも、規約の変更が履行された際には、必ずワンオフメールを送信していますね。

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最後に

メールマーケティングは、AARRR全てに効果的な貴重なマーケティングツールです。特にリテンション最適化に大きな効果が発揮され、FacebookやeBayのような成長目覚ましい企業も頻繁に活用しています。

ドリップキャンペーンで顧客との継続的な関係を築いた後にイベントメールとワンオフメールを組み合わせることでその効果は更に向上しますが、メールの質や頻度でユーザーの反応も大きく変化するため、仮説構築・検証・改善のサイクルを絶やさないことを心がけましょう。