edited by Ryutaro Mori
「スマホゲーム中毒」
電車の中、部屋で独り、食事中などなど、どこにいても何をしていてもスマホを片手にゲームを始めてしまう。そんな経験を読者の皆様も一度は体験したことがあるかもしれません。
「純粋に楽しいから」という理由はもっともらしく聞こえますが、この中毒症状の裏にはユーザーを病み付きにするための秘密がいくつも隠されており、それ故に社会問題を引き起こすまでに至っているのです。
本日は、数あるゲームの中でもその中毒性が注目を集め、月間アクティブユーザー数は4,600万人、運営元の時価総額は7,000億円を超えるとも言われる「キャンディ・クラッシュ・サーガ」の例を取って、中毒症状をもたらす5つの理由を心理学的な観点からご紹介致します。
コンソールゲーム市場をはるかに上回ると言われるスマホゲーム市場への進出を考えるのであれば、読んで損はない内容です。
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簡潔さ
キャンディクラッシュサーガは、3つの同じ色のキャンディを揃える、LINE POPと同じ感覚のスマホゲームです。
幼稚園児でも楽しめるこの簡潔さは、新たなものを試す際にかかる脳内の負荷を軽減し、最適な初回体験を促す作りになっています。
また、最初のステージは経験が無くても簡単にクリアー出来る設計になっています。この達成感は脳内でドーパミンの放出を促進し、同じ行動を繰り返したくなる衝動(中毒症状)を刺激しているのです。
変動比率スケジュール
最初こそ簡単にステージをクリアー出来たものの、徐々に難しくなっていくのがゲームの性。ユーザーを飽きさせないために、難易度が増すのは当然です。
しかし、難易度が増せばその分達成感を得る回数は徐々に減り、結果としてユーザーを逃すことにつながります。ユーザーの中毒症状を継続的に保つためには、勝たせすぎるのも負かし続けるのもダメというわけです。
この反動を防ぐために開発側が操るのが「変動比率スケジュール」という戦術です。簡単に言ってしまえば「ユーザーは次いつ勝つか予測は出来ないが、ゲームを楽しく続けるには十分な回数勝たせてあげる」戦術を指し、スロットやパチンコにも使われています。
キャンディクラッシュサーガのようなゲームは、プレイヤーのスキルよりも「運」に勝敗が左右されることがほとんどであり、この「運」が最適に調整されたとき、中毒性は一気に高まるのです。
コントローラー心理
前述の「運」に深く関わってくるのがコントローラー心理です。
キャンディクラッシュサーガのようなパズルゲームをプレイしていると、ゲームを有利に進める、つまり「運」を高めるためのアイテムに必ず出くわします。
これらのアイテムがどれだけゲームの結果に影響を与えているかは未知数である一方、ユーザーはこれらのアイテムを利用することで「自分がゲームの実験を握っている」という意識を強めます。この幻想によってユーザーが知覚する勝率は非合理に高まり、「次こそは勝てる」という錯覚を強めてしまうのです。
利用制限
多くのパズルゲームがそうであるように、キャンディクラッシュサーガも(勝ち続けない限り)一定の期間で利用出来る回数に制限が存在します。
もちろんこれではユーザーが満足感を覚えることは無く、一見フラストレーションがたまるようにも思えますが、「『おあずけ』を食らった後の楽しみはそうでない場合をはるかに超える満足感を対象者に提供する」という結果が科学的にも証明されており、利用制限は中毒性に拍車をかけていることが分かります。
どうしてもプレイしたいユーザーは利用制限を撤回するために課金が求められ、レベニュー源になるあたりも本当にうまい仕組みだと思わず感心してしまいますね。
キャンディ
なぜキャンディクラッシュサーガはキャンディをモチーフにしてるのか。実はここにも心理学的理由が隠されています。
スロットを一度でも体験したことのある方ならご存知の通り、スロットにはさくらんぼやスイカの目が存在しています。これは偶然ではなく、ゲームを「食べるという行動から人間が得る幸福や満足感」と連想させるための仕組みなんです。
実際にキャンディクラッシュサーガの広報の方もキャンディと娯楽/リラックスの関連性を認めており、キャンディクラッシュサーガには私たちが考えている以上に心理学を意識して作られたプロダクトであることが分かりますね。
参考記事: This is what Candy Crush Saga does to your brain, theguardian