「売上高は25億200万ドルで、前年同期と比べ71.6%増加した。」
Facebookの2014年Q1決算を伝えるニュース記事の一節です。
フェイスブック疲れや若者のフェイスブック離れが叫ばれる中、どうしてこうまで高成長を保てるのか。その裏には、違法ドラッグ業界を牛耳るドラッグディーラーが巧みに使う商法が隠されています。
「釣り」
ドラッグディーラーは、まずは信頼をお金で買います。無料、もしくは安価な値段で顧客を釣り上げ、中毒症状が出始めたころ高額な料金を請求し始めるのです。
Facebookはどうでしょう。
今は昔、Facebookにおけるブランドページへの「いいね!」とフィードへの投稿の表示は、ほぼ同義語と呼べる時代がありました。
しかし、時は進み2013年、フェイスブックはアルゴリズムの変更によりブランドの「タダ乗り」を制限し、急遽カネの亡者と化したのです。
Facebookもドラッグディーラーも、客をお手頃感で引き寄せ、中毒性を抱かせたところでカネを巻き取るという意味では、同様の商法と言えるでしょう。
供給のコントロール
「釣り」に関連して、フェイスブックとドラッグディーラーは「供給をコントロールすることで価格をあげる」手法を使うという共通点も持ちます。
もし、薬物中毒者が欲する薬の量(需要)より多くの薬が市場に存在(供給)すれば、需要と供給の法則により、価格は自然と押し下げられます。
しかし、もちろんそれではドラッグディーラーが儲かりません。着実に儲けを生む為に、ディーラーは常に供給量を管理し、価格をつり上げておく必要があるのです。
ドラッグディーラーにとっての薬は、Facebookにとっての「いいね!」やフィード上へのリーチです。
単純に「いいね!」を売ってマネタイズするのでは無く、フィード上に表示される回数を制限することで、Facebookは価格を操り、今回の決算に見られる大きな躍進を遂げているのです。
口コミ
ドラッグディーラーは、通常の商人のように、看板を出したり、広告を出したり出来ません。
ドラッグディーラーのPRは、全て顧客から顧客への口コミに依存しているのです。
勿論フェイスブックも、実名制のSNSとして、親しい友人同士の口コミによって人気に火がついたサービスです。
現在広告収入で大きな成果を伸ばしているのも、個人ユーザー間での口コミが口コミを呼び、実際にPRに成功している企業が多く存在しているからなのです。
既存顧客>新規顧客
ドラッグディーラーは、新規顧客の獲得に比べて、顧客の継続の方が費用対効果が高いことを知っています。
単純に高い金額で売り続けるのでは無く、時には無料で薬を与えたり、セットで薬を楽しむ為のツールを与えたり、顧客を掴んで離さないための施策を絶えず行っています。
Facebookも、ここへ来てリーチを買うことが当たり前になりましたが、とはいえ無料のアナリティクスツールの導入や自動で流れる動画広告など、
様々なリソースをブランド側に提供しています。
LTVの最大化
ドラッグディーラーは、バイヤーから徴収する収益を最大化すること、つまりLTVを伸ばし続けることを絶えず考えています。
LTVを伸ばす為には、継続期間を伸ばすことと同時に、アップセルも必要。新たなドラッグを売ったり、ドラッグディーラーも余念がありません。
その一方で、Facebookはどのようにアップセルを行っているでしょうか。
まず多くの企業は、「いいね!」を買うことから購入をスタートします。続いて、ケースバイケースではありますが、多くの場合は投稿のリーチ数を増やすべく、投稿単位に広告費を割く(Facebookから見た場合の)いわゆるアップセルを行います。
投稿単位の広告の下限は500円に設定されており、(途中で止めることも可能ではありますが、)これもアップセルの価値を高める為の施策です。
更に、最初の設定金額にいつでも追加で費用を計上出来るように、アプリやネットのインターフェースには、「広告を出しやすく、止めにくい仕掛け」が随所に見られます。
対投稿広告の出稿及び取り消し時の画面を見てみましょう。
上記の図は、対記事広告の出稿画面です。「Boost Post(=対記事広告を出す)」をクリックすると、ポップアップが出てきますが、ポップアップの外にカーソルを移動させてもポップアップが消えることはありません。
次に、取り消し画面を見てみましょう。
上記のように 、ポップアップ上にカーソルを載せたままにした時はポップアップが表示されたままです。
しかし、カーソルを右上に移動させてみると…
ご覧のように、ポップアップが消えてしまうのです!
これは、偶然ではなく、まさに「広告を出しやすく、止めにくい仕掛け」であるといえるでしょう。
プロダクトソウル
最後に、ドラッグディーラーも、フェイスブックも、商売はプロダクトが全てであるという理念、すなわち「プロダクトソウル(グロースハックはマーケティングよりもプロダクト開発に焦点を当てなければいけない)」を持ち合わせています。
マーケティングやバイラル効果は市場のニーズを適切に満たすプロダクト開発の後にくればいい、そしてそこに無駄なリソースを割くべきではないと、両者はよく理解しているのです。