次世代のFacebookに、俺はなる!

そんな逞しい声は、国内外問わず、至る所から聞こえてきます。

しかし、そんな逞しいことを口にする一方で、実際に提供しているサービスやアイディアを見てみると、既に存在するサービスの純粋な模倣や、マーケットが大きいからという理由だけで始められた夢や情熱のないサービスが多いのも事実。

本日は、最近様々なお話を頂く中で、「短中期的にこそお金にならなくても、そんなのスケーラブルでもサステイナブルでもないよと言われても、夢があって、社会にインパクトを与えられるようなことに取り組みたい」という軸がブレッブレになりかけていた筆者が、自戒の念を込めて、「馬鹿げたことのススメ」を綴ってみたいと思います。

まだなーんにも形に出来ていない筆者が夢ばかりを綴るオナニー記事を書いたところで何も面白くないため、馬鹿げたことから成功した事例や、思わず馬鹿げてカネになりそうもないことに挑戦したくなる成功者の名言の数々を中心に執筆致しております。

馬鹿げてたって別に良い理由

筆者が最近見た刺さるウェブコンテンツに、米系VCのAndreessen HorowitzのパートナーであるChris Dixon氏がアイディアの善し悪しについて語るYouTube動画(英語)が挙げられます。

23分ほどの動画なので是非実際に見て頂ければと思うのですが、もちろん全編英語のため、簡単に要約してみました。

『アイディアのスイートスポット

最良のスタートアップは、「ダメなように見える(赤)けど実際は良い(青)アイディア」のもとにサービスを開発していると、以下のベン図を用いてDixon氏は語っています。

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「良いアイディアのように見えて実際も良いアイディア」の基に開発を進めるスタートアップの方がよっぽど成功の確率は高そうですが、そうしたサービスは既に潤沢な資金を持った企業が開発を進めており、あらゆる面で劣るスタートアップが直接対決に臨むのは懸命ではないというスタンスです。

Dixon氏は、「スタートアップ及びVCは大企業の食べ残しに従事している」とも述べており、誰が聞いてもカネになると思えるアイディアばかりを追求することに疑問を呈しています。

「馬鹿げたアイディア」で成功した実例

Dixon氏の理論は経験則に基づくものなのか、実例を見ていきましょう。

①Google

Dixon氏は、Googleこそまさに馬鹿げたことから大成功を収めた典型例だと語ります。

実際にGoogleが創業した当時、Yahooを含む大企業は、検索エンジン事業を単なるコスト要因として位置づけていました。

今でこそそんな考え方はちゃんちゃらおかしいものですが、検索エンジンは「他のウェブサイトに無意味にトラフィックを譲り渡すサービス」として認識されていたのです。

しかし、蓋を開けてみれば、Googleはネット広告事業を中心に大躍進。

その後はソーシャルメディア事業やウェアラブルなどにも手を広げ、最先端のIT企業としての地位を確固たるものにしています。

②Airbnb

今でこそ急成長を遂げ、その在り方に関して司法界を巻き込んだ論争を繰り広げるAirbnbも、元々はばかげたアイディアとして、万人から受け入れるコンセプトではありませんでした。

『人の家を渡り歩く「カウチサーフィン」なんて、ヒッピーくらいしか利用しない』という意見が大半だったのです。

③Facebook

今でこそ世界に12億人ものユーザーを持つFacebookも、ローンチ当初は大学生のみが使う暇つぶしのためのウェブサイトでした。

もちろんお金の無い学生が、暇つぶしのためだけに使うサービスに多くの投資家が真っ先に目をつけることはありませんでしたが、徐々にターゲットを広げていったFacebookは、今や世界の最先端を行く企業の1つに成長しています。

馬鹿げたアイディアが持つ3つの特徴

Dixon氏によれば、馬鹿げているけど成功するアイディアは、多くのケースで3つの特徴のいずれかを持ち合わせていると言います。

①おもちゃ扱いされる

電報がビジネスの連絡手段の主流であった時代、まだ受け入れが進んでいなかった電話は、ビジネス向きではないおもちゃとして扱われていたそうです。

前述のFacebookも、「金のない大学生の暇つぶしの道具」として扱われ、そこにビジネスチャンスはないと多くの投資家に相手にされなかった経験があり、この特徴を持ち合わせていたと言えるでしょう。

②複合サービスの一部に特化

新聞社の多くは、かなり古くから読者同士の物の売り買いやニーズのマッチングに利用されるクラシファイドを提供していました。

提供側から見ればそれはあくまで全体のサービスの一部であり、クラシファイドに特化することは馬鹿げているという考え方が一般的だったのです。

しかし、craigslistはクラシファイドに特化したことでサービスとしての価値を高め、今では月間200億PVを稼ぐウェブサイトに成長しています。

③社会的通念との離別

社会の現状を観察し、存在するニーズに対して解決法を提示することもビジネスを成功させる上では必要でしょう。

しかし、爆発的な成長を誇るサービスは、必ずしもニーズベースで始まったものばかりではありません。

例えば画像共有サービスのFlickrは、「写真をネットにアップロード=自分だけオンラインで閲覧可能」が通説だった時代に、写真を一般公開し、あらゆる人と共有出来る仕組みを作ったことで人気を呼びました。

Facebookのニュースフィードも、もともとは「ストーカー行為」として敬遠されたこともありましたが、今では誰もが1日1回はチェックする「習慣」へと変化を遂げています。

前述のAirbnbも、『人の家を渡り歩く「カウチサーフィン」なんて、ヒッピーくらいしか利用しない』という通念を見事に打ち破った良い例です。

馬鹿げてカネにならないことにトライしたくなる名言

ここまでをご覧頂いて、「簡単に投資は集まらないかもしれないけど、馬鹿げたこと、カネにならないものにトライしてみてもいいのかも」と、少しは考え方を変えるきっかけとして本記事はお役に立てているでしょうか。

最後に、筆者が最近思わず口に出して「いいね!」と言いたくなった名言をいくつかご紹介してみたいと思います。

①World Innovation Lab 伊佐山元氏

最終的に失敗したベンチャーと成功したベンチャーを私の見た範囲で考えると、やっぱり振り返ると「なんとなく流行りだから、お金儲けできそうだから」と言って飛びついたベンチャー経営というのは瞬間的に儲かっても長続きしなくて、結果的に投資も失敗している事例が多いんじゃないかなっていう反省は多少あります。[…] 

(『「普段の生活をしていて、こういう問題を解決するためにこのベンチャーを始めたんだ」というタイプ』って、)ある意味ウブで聞こえはいいですけど全然ビジネスにはならそうだったりするんですよね。だけど結局そういう人って長続きして、解決しようとしているミッションを「そうだね」と思っている人がいる限り、お金がどこからか降りてきてその事業が継続して、最後はそれが大きなビジネスモデルになって、ちゃんとした会社になるという道を経ている会社というのが多くて。(logmi)

②Google Larry Page氏

「不可能なことなどない」をモットーに問題に対して新しいアプローチを取り続ければ、全く新しい解決策が生まれるのです。

ものすごく大きい、バカみたいな夢を見ることは成功するためのキーだと思います。バカなことを言っている、と思うでしょう? 夢が非現実的であればあるほど、競争者がいなくなる。(Huffington Post)

③Andreessen Horowitz Chris Dixon氏

「一見馬鹿らしいけど本当は良いアイディア」を思いつきたいなら、業界のトレンドを追いかけたり、リポートを読み漁ったりしてはいけない。そんなものはコンセンサスの基に成り立っている訳だからね。「一見馬鹿らしいけど本当は良いアイディア」を思いつきたいなら、自分の身の回りに起きた実体験を通じて感じた問題や機会からアイディアを考えることだね。

StudyBlue Chris Klündt氏

アントレプレナーシップは、手っ取り早くカネを稼ぐ為のスキームであるべきでない。 起業家は、単純に娯楽性の高いサービスや生活をほんの少し居心地の良いものにしてくれるサービスに焦点を当てるのではなく、教育とか、ヘルスケアとか、もっと自己向上につながるサービスを提供していくべきだ。現状のITバブルから一度離別して、手っ取り早く欲望を満たす為のサービスばかりでなく、もっと長期的に何が出来るかを考えてみよう。給与や待遇ではなく、本当に重要なことに焦点を移してみようじゃないか。(VentureBeat)

⑤ Lomaki Rebecca Grant氏

(前VenturebeatのライターであるGrant氏は、世界を変えると意気込んでテック業界に入るも、「意味の無い、くだらないサービスが多すぎる」と嫌気がさし、慈善事業系スタートアップLomakiを創業)

未だに[テクノロジーは世界を変えられると]信じてる。でも、今シリコンバレーでは社会にとって本当に役に立つことに対して重きがおかれていない。スタートアップや起業家も、社会に利益をもっと還元出来るはずなのに、出来ていない。勿論彼らが悪いと言っている訳じゃないし、しっかりと社会への還元を考えているスタートアップや起業家も存在するけれど、実際のところ、どうしようもなくくだらない「問題」を解決することばかりにシリコンバレーのエネルギーが向いてる気がしてなりません。[…] もし「デジタルジャンクフード」に割かれてるリソースのほんの少しでもが女性の地位向上に、ホームレスの救済に、70億人全員が安心して食事にありつけ、健康に、そして尊厳ある生活を送れる為に使われたら… oh what a [tech] world that would be (medium)

最後に

なるべくオナニーや厨二感を出さないように書いたつもりの本記事ですが、見方よっては「ビジネスで成功したこともない若くて青いのがなんか言ってる」記事になってるのではないかと、若干ビクビクしております。(生まれもっての小心者です)

僕自身、社会的規範とはほど遠い人生を送ってきた背景(小学校中退→引きこもり→海外留学→社会の役に立つこと色々実験中(今))があるため、世間一般的に見て「一見馬鹿げたこと」や「一見金にならないこと」をすることに抵抗感はあまりないのですが、社会人になってビジネスの世界に揉まれてみると、考え方がやや固くなってきた気がしてなりません。

そんな私が自戒の念を込めて執筆した本記事ですが、「Think outside the box(通念にとらわれずに物事を考える)」な考え方は起業家にとっていつになっても重要だと思うので、「馬鹿げたことのすゝめ」は是非ご参考頂ければ幸いです。

また、本記事で紹介した事例が成功した背景には、単純に馬鹿げたアイディアを世間に公開しただけでなく、馬鹿げたアイディアを世間に浸透させる為に徹底的な努力を怠らなかったことが挙げられます。

馬鹿げたアイディアに満足するのではなく、どうすれば世間がそれを受け入れてくれるのか、世間ウケを狙い、元来の世界観を崩すこと無く本気で考え続けられるか否かが成功を左右する鍵であることに間違いないでしょう。