translated by Takaya Uchida
アメリカのペンシルベニア州にあるWharton School of Businessは既存ユーザーの紹介でユーザーになった人の方が、他の経路でユーザーとなった人より18%も多くの人がプロダクトを使用し続けてくれる傾向があると述べています。
ユーザーの紹介(リファラル)は、それがユーザーが口コミで友人にプロダクトの入手方法、プロダクト使用による利点の証明や有益な内容を伝える等、形態の如何に寄らず、ビジネスを成長させるのに最も持続的な手法なのです。
それにもかかわらずリファラルの仕組みを最適化している企業はほとんど存在しないのが現状で、これは実にもったいないことをしています。
リファラルがプロダクトグロースに強力に寄与する理由は、リファラルをユーザーに行わせるのが困難である理由と同じで、それがプロダクトを紹介する動機が特にない状況の中で友人や親族等、紹介される側に取って信頼を置いている人からくるものだからです。
親友というものは互いにスパムを送りつけるようなことはしません。
そのため、プロダクトを提供する側のタスクとしては自身のプロダクトを紹介しないことはかえって友人達にとって損である、という感覚をユーザーに呼び覚ますことにあります。
以下では、ユーザーを最も強力なマーケティング資源として活用する方法を述べていきます。
本記事はThe Userlike Blogに掲載された記事(原題:Boosting Your Customer Referrals: 11 Best Practices)を参考に執筆したものとなります。
1. サービスの内容を明確に定義する
リファラルとはプロダクトの宣伝文句をユーザーが友人に伝言ゲームで伝えるようなものです。
きちんとプロダクト概要を友人に伝えてもらうためには宣伝文句が記憶しやすいものでなければなりません。
ここで一行のキャッチコピーが力を発揮します:「1つ購入すると2つ目はタダ」や「満足できなければ全額返金」等々。
メッセージがシンプルであればある程、ユーザーの頭に残りやすく、友人や親族にも伝えやすくなります。
高級な靴やアクセサリーを取り扱っているオンラインショップであるHotter UKは「100% Happy Guarantee」というサービスを提供しています。
このサービスでは、ユーザーは購入した製品をどのような理由であっても購入から90日以内であれば返品できるようになっています。
ここで強調したいのはまず、Hotter UKのキャッチコピーが非常にわかりやすく、記憶しやすいということです。
さらに、全額返金のポリシーを掲げていることによって品質管理に細心の注意をはらっており、品質管理を重視すればする程企業収益にもつながることを理解している、ということを人々にアピールできているのです。
2. 最も重要なユーザーを見つけるにはCRMシステムの中を探す
あなたにとって最も重要なユーザーはおそらくプロダクトに対するロイヤリティが最も高いユーザーであり、そのようなユーザーが一番知り合いにプロダクトを紹介してくれる傾向があります。
CRM(顧客関係管理)から得た知識を有効活用しましょう。
プロダクトグロースにとって最も貢献しそうなユーザーを見つけ、顧客関係にてこ入れをすることによってリファラルを活性化させることが重要だと言えます。
3. チェックアウトプロセス後にリファラルをお願いする
リファラルをユーザーに要求する上で、タイミングは非常に重要な要素です。
商品購入後のチェックアウトプロセスの最終段階は良いタイミングだと言えるでしょう。
なぜなら、この段階でリファラルのお願いをすることは訪問者のコンバージョンを妨げることもなく、実際にその訪問者がコンバージョンしたということはおそらくその人はあなたのプロダクトやサービスに好意的な印象を持っているため、協力してくれることが考えられるからです。
4. SNSとの統合やオートフィルによってユーザーの手間を最小化する
人は一般的に怠け者な生き物です。
しかし、オートフィル機能を加えたり、リファラルのプラットフォームをSNSと統合し、ユーザーにリファラルの手間を最小化することによって上手く機能させることができます。
Yeswareというサービスはリファラルのフォームを顧客の代わりに事前に記入しておくことによってリファラルを成功させました。
5. アンケートという形態をとることでリファラルをあからさまにしない
リファラルを直球でお願いすることは押し付けがましいと感じる人は、表面上はアンケートという形式をとることによってリファラルの要求を隠すことができます。
タスク管理ツールを提供しているAsanaを例に取り上げてみましょう。
Asanaではユーザーがサービスを一定期間使用した後、「Asanaを使ってみて、あなたはこのサービスは友人に紹介できそうですか?」というこの質問のみで構成されているアンケートが表示される仕組みになっています。
これは、直接リファラルをお願いするのではなく、ユーザーに意見を求めることによって彼らの自尊心を刺激することになります。
それと同時にこのような質問を投げかけることによって、ユーザー自身にAsanaのプロダクトにどの程度ありがたみを感じているかを認識させ、意識をリファラルに向けることにもつながるのです。
企業によっては好意的な評価をしてくれたユーザーのみにフォローアップをし、友人のメールアドレスのみを記入すれば良いリファラルのフォームを配信する方法をとっています。
6. プロダクトにリファラルの説明書を同伴する
プロダクトの提供側にとってリファラルの重要性は火を見るよりも明らかですが、一般的にユーザーはそこまで考えが及びません。
そのため、ユーザーにリファラルの存在を喚起することに悪いことはありません。
プロダクトがハードの製品であった場合は製品が梱包された箱の中に、ソフトプロダクトであった場合はプロダクトの購入と共に、そのプロダクトに興味を抱きそうな人を他に知っているかどうかを聞くフォームとリファラルの手順に関する説明書を購入者にお届けすることが考えられます。
プロダクトが手元に届く瞬間が最もわくわくしている時です。購入した人にまだいい気分の内に行動を起こさせることが大事だと言えるでしょう。
7. 知人を招待してくれたユーザーには報奨を提供する
知人をプロダクトに招待してくれたユーザーへの報奨としては、今後リリースされるサービスやプロダクトに使える割引券、ギフトカードや現金等といった金銭的報奨が挙げられます。
この際、リファラルの成功から報奨を提供するまで期間を可能な限り短くすることが重要となります。
ランディングページでリファラルをユーザーにお願いしているOmaha Steaksを見てみましょう。
下がランディングページのスクリーンショットですが、灰色で強調されている箇所には
招待した友人がOmaha Steaksで注文してくれた場合、その友人には無料で12個ハンバーガーを提供いたします。さらに、招待した友人が2人注文する毎に招待者には$80以上の注文でご利用できる$20分の電子ギフト券を贈呈いたします。
と書かれています。
金銭的報奨を提供している他の例としては、女性物の洒落た下着をネットで販売しているAdoreme.comがあります。
このサービスでは、友人を一人招待してくれる毎に、招待者にはAdoreme.comのストアーで使用できる電子マネーを$15分贈呈するようになっています。
8. 招待されて実際にサービスを使用してくれた人にも報奨を提供する
上でも述べたように、友人は互いにスパムを送りつけるようなことはしません。しかし、良き友というものはいい話を自分のためだけに取っておくようなこともしないものです。
そのため、リファラルに対する報奨は招待した人と招待された人両方に提供することは非常に効果的な方法なのです。
すぐ上で紹介したAdoreme.comは招待された人にも製品を割引価格で販売する特典を提供しています。
9. 正式にリファラルプログラムを構築する
リファラルのプログラムを構築することは顧客に報奨を提供することをシステム化してくれるのです。
プログラムの例として、ユーザーが友人を招待したり、特定の行動を取ってくれた時に決まった額の割引や景品を贈与することを事前に規定しておくことが挙げられます。
リファラルのプログラムで最も成功しているサービスは言わずもがなDropboxでしょう。
Dropboxの輝かしい成功を可能にしたのは、ユーザーが何を本当に欲しているのかや需要があるものを提供することの価値をプロダクトマネージャーが熟知していたことにあります。
Dropboxは友人にプロダクトをシェアしてくれた人に追加でストレージを提供していますが、ストレージは謝礼のメールやトロフィーのように象徴的なものでなく、実際にユーザーにとって有益な景品でユーザーがリファラルに費やした資源を価値あるものとしてくれたのです。
10. 謝意をきちんと伝える
ユーザーが他人にあなたのプロダクトを紹介してくれた場合、彼らは親切心からそのような行動を取ってくれているため、知人を招待した後にプロダクトの運営側から何も音沙汰がないとユーザーは感謝されていないと感じてしまいます。
リファラルを行ってくれたユーザーには招待された人が自社のプロダクトやサービスを使ってくれた、くれなかったにかかわらず機会がある度に必ず彼らの行為に感謝の意を表しましょう。
好意的なフィードバックはより多くのリファラルを呼び込むことにつながるのです。
沢山顧客を抱えている場合は、返礼のプロセスを自動化させることを積極的に行うべきでしょう。
返礼のプロセスを自動化するためのツールとしてはアメリカのサービスではありますが、Referral Candy、NextBee、Ambassador、Invite Box等があります。
知人を招待してくれたユーザーの現状把握が疎かになってしまうと、リファラルの機会を失うのみならず、既存の顧客までもが正当に評価されていないと不満を持ってしまう可能性があるので、注意しましょう。
11. 他社と協力する
提携先の企業に自社の顧客を紹介することは、後々その企業から自社に顧客を紹介してもらえることにつながることがあります。
あなたのプロダクトが抱えている顧客の中でも最もプロダクトを良く使ってくれている人にとって、他にどのようなサービスが有益かを考えた後、提携先企業のプロダクトやサービスへの招待をすることは長い目でプロダクトグロースを見た場合、有効な手段なのです。
この際、その招待があなたから来ていることを提携先企業に事前に知らせておくことが重要となります。
最後に
リファラルを飛躍的に伸ばすことは、自社に合った方法の発見や最適化を要するため、時間のかかる作業かもしれません。
しかしながら、上記でご紹介したようなテクニックをいくつか実践されれば、ユーザーがあなたのプロダクトを友人や知人に紹介したくなることは間違いないでしょう。