■はじめに
グロースハック図書館シリーズ、前々回、前回に続く3冊目です。
今までの記事はこちら:
第1回「世界一即戦力な男」
第2回「ハマるしかけ」
本書はグロースハッカーの読むべき最初の一冊、といった趣の書籍です。
具体的な事例について豊富に記されているわけではありませんが、基本的なグロースハッカーの定義、そしてマインドセットについて書かれています。
グロースハッカーのみなさまにおいては、日夜グロースハックに励むあまり、目の前の問題を解決することに追われてしまってはいませんか。
初心忘るるべからず。筆者はこの「グロースハッカー」を読んで、グロースハックの本質とは何なのか、改めて考えさせられました。
■グロースハックとは、自ら進化するシステムを作り出すことである
まずは本書に書かれている、グロースハックの定義を引用してみましょう。
グロースハッカーは、伝統的なマーケティング戦略を放棄し、検証•追跡•測定が可能なものだけを用いる。
彼らの武器は、CMや宣伝や資金ではなく、電子メール、PPC(ペイパークリック)、ブログ、プラットフォームAPI(アプリケーション•プログラミング•インターフェース)だ。古い世代のマーケターが”ブランディング”や”マインドシェア”などの漠然としたものを追い回している間、グロースハッカーはひたすらユーザーと成長とを追跡する。そして、戦略が当たれば、ユーザーがユーザーを引き込む連鎖反応が生まれる。グロースハッカーとは、自立し、自己増殖する成長マシンの発明者であり、オペレーターであり、整備士だ。この成長マシンが新興企業を成功に導くのだ。
今、グロースハックジャパンをご覧のみなさまなら、なるほどその通りだと納得する定義だと思います。
この書籍全体がこの定義に沿って書かれていますし、全体のまとめとして素晴らしい文章です。
しかし同時に、いささか具体的な用語が多く、掴みにくい定義にも感じられます。
今までのマーケティングと、グロースハックは、一言で言うと、何が決定的に違うのでしょうか。
グロースハックのもたらした決定的な革新とはなんだったのでしょうか。
■想像力の限界を超える方法
この「グロースハッカー」を読んで、グロースハックの本質とは「人間の想像力を超えることができる」ことにあるのではないかと考えました。
従来のマーケティングは、主に個人の想像力に依っていました。
数値を分析することはあれど、その解釈の結果打ち出す施作は、結局のところマーケティング担当者の発想できる以上のものにはなり得ません。
当然、個人の想像力の限界が、そのままマーケティングの限界に繋がってしまいます。
一部のカリスママーケッターだけが、その並外れて優れた直感で大きな結果を出してきた、とも言えるでしょう。
しかしグロースハックはそうではありません。とにかく様々な施作を試み、実験を繰り返し,最もユーザーの反応が良かった施作を組み合わせていくという手法です。
グロースハッカーに必要なのは、直感や想像力のようなアーティスティックな才能ではありません。
科学的に結果に向き合うサイエンティストとしての眼差しです。
結果として、想像もつかないような最適な効果を上げる施作の組み合わせに辿り着くことができるのは、他でもないグロースハッカーなのです。
そうした意味で、グロースハックとは、人間の想像力の限界を超える手法と言えるのではないでしょうか。
■おわりに
グロースハックは生物の進化に似ています。この地球では、多種多様な形態を持った生物がひしめいています。
その中には、人間の想像を絶するような姿の生物も数多く存在しています。
しかしどんな生物も、それが生き延びている以上、何らかの形で環境に対して、長い試行錯誤の中で最適化されているのです。
同じように、今まで考えもしなかったような最適な施作を生み出すことができるグロースハックという手法は、20世紀の人類が到達できなかった、新しい地平を切り開いているのかもしれません。
グロースハックの基礎に立ち返ると同時に、「グロースハックとは何なのか」という問いは、意外に哲学的な問いに繋がっているのかもしれない、と考えさせられた一冊でした。