なお、本記事は多くの企業の成長支援をしているGrowth DevilのA Guide To Growth Hacking Retention Strategiesという記事を翻訳しています。
グロースハックで重要視すべき点は?
どんなスタートアップや大手企業であっても、商品やサービスの展開にあたっては、いかにしてユーザーを獲得し事業を成長させていくかということを第一に考えるでしょう。ユーザーがいればいるほど、利益に直接つながっていくからです。「企業を成長させること」だけにフォーカスしたからといって、ユーザーがそのサービスや商品を継続的に利用してくれる(リテンション)とは限りません。
もちろん、とにかく早く新しい顧客を獲得しなければ、ユーザーをどんどん逃してしまうことになります。リテンションをいかに高めていくのか、ということはサービスやプロダクトをグロースハックしていくうえで、特にフォーカスすべき項目です。
データに向き合う
グロースハックは、データありきの考え方です。つまり、成長までの「過程」よりも、データで分析できる「結果」の方が重視されます。どんなことも、結果として成功すればよしとされるのです。グロースハックは、手段としては従来のマーケティングのような型にはまったやり方はしませんが、だからこそアナリティクスで測定ができるようなもの(=データ)が基準となります。
Mixpanel
MixpanelというツールはGoogleアナリティクスと同じ機能性を兼ね備えていますが、より細部まで見ることができます。例えば、出稿している広告からどれだけの人があなたのWebサイトに来たか知るためにはこのツールが有効です。
また、これは見込み客の絞り込み(セールスファネル)をしてくれます。売上の中のどこで顧客を失っているかを確認できるため、その問題のある部分にフォーカスできるのです。
顧客を理解する
リテンションはまず顧客を知ることから始まります。例えばバーで出会った人に名前も番号も聞き忘れてしまったら、よほどのことがない限りその後もずっと付き合い続けられるような関係にはなれませんよね?その人のことを何も知らなければ、その後の付き合いは始まらないからです。これは「リテンション」にも同じことが言えます。つまり、自社の製品を使い続けてもらうためには、顧客のニーズやどこに不満を持っているのかをよく知る必要があるのです。
多くの企業でユーザー獲得の機会を逃してしまっているのは、市場研究をしっかりできていないからではなくマーケティングの応用に関する視野が狭いがために、潜在的な顧客を失っているからです。リテンションのためのグロースハックはプロダクトのコンセプトをしっかり固めることから始まり、会社におけるあらゆる面へとつながっていきます。
リテンションを再優先にする
現代の市場においては、パレートの法則は正しいといえるでしょう。一般的には、収益の80%はリピーターから得られると言われています。どんなビジネスでも、固定客の基盤がなければ持続的な利益を得ることはできません。
最初の三年で利益を出すようなビジネスよりも、その先何年もの間ずっと成長し、利益を出し続けられるようなビジネスのほうがよいでしょう。
製品開発やマーケティングを行う過程でユーザーのリテンションを目指すことこそが、成功への道筋をたてるということなのです。
ユーザーのためにデザインする
スタートアップで製品を開発するときには、現在の市場での顧客のニーズやギャップを埋めることを考えるでしょう。これを考えることで、何から始めたらよいのかということは確かにわかりますが、その後も発展できるような道筋までは示してくれません。
最初の製品モデルが完成したらできるだけ早い段階で、次世代製品もリテンションに重きを置いて開発を進めるべきです。改善のための道筋としてユーザーに自社製品を実際に使ってもらい、そのフィードバックをもらってみましょう。製品開発においてとても価値のあるフィードバックを返してもらえるでしょう。これは、玩具業界にグロースハック戦略を取り入れてきた「レゴ」という会社を例にあげてみるとよくわかります。
よりリーズナブルな価格帯の会社に顧客が流れて行ったためレゴの市場シェアが下がってきたので、その下落した市場シェアを取り戻すために早急な対応が必要でした。この解決策として、彼らは顧客に目を向けたのです。自分たちの顧客に、商品開発を進めてもらおうと考えました。
レゴは、自社製品を使ったユニークで面白いデザインを顧客から集めました。社内のデザイン費の一部分を使って、この参加者のユーザーからデザインを買ったのです。
ソーシャルメディアのプラットフォームを通して、ユーザーが創った商品によりシェアも増え自分たちで市場を作り上げていきました。ユーザーが創ったものが実際の製品になるというサイクルを作ったことで、クラウドソースで集めたアイディアとオーガニックマーケティングから利益を得る、ということを進めていったのです。
ユーザーからのフィードバックをもらうことで、自社製品をよりよくするためのアイディアや、次世代製品の企画案、アドオンやアップセルを考えたり、ビジネスを維持していくための方法へとつなげることができます。
自社製品を改善できるようなよい情報をユーザーがせっかく持っているのですから、それらは参考にするべきです。利益だけを考えたような商品を作ろうとしてはいけないのです。ユーザーが安心して快適に使えるようなデザインを第一に考えましょう。こうすることで、多くのお客様に使ってもらえますし、さらにはそれが利益にも繋がっていくため、最終的には会社の成長にも繋がります。
新時代のマーケティング手法
利益を得るために何か商品を作るということは、手段のひとつでしかありません。マーケティングをすることで、自社製品を多くの人に広める事ができます。ここで重要なのは、その製品の情報を、狙ったターゲットに適切に届けることと、それと同時に既存ユーザーにも届けることです。製品開発に重きを置いている時こそ、新しいユーザーの獲得にも集中できるのです。
実際にどのくらいの人たちに自社製品を届けられるか、と考えてみましょう。半年経って振り返ってみると、毎月何千人もの新規ユーザーを獲得しているかもしれません。しかしそれと同時に、繰り返し使ってくれるユーザーはほんの一握りにしかすぎない、ということもありえます。ではどのようにして、新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの保持という2つの問題を同時に解決できるのでしょうか?それは、「とにかくテストしてみる」。これに尽きるのです。
スタートアップ企業であったら、マーケティングにかけられる予算は限られているかもしれません。それを最大限に活用するためには、色々と手段を計画・実行したら後は待ってみる、という辛抱強さが必要なのです。予算の中でできることに少しずつ投資をして、その結果がどうであろうとそれを全部活用しましょう。ここでまた、「グロースハックはデータがすべてである」という話に戻ります。少しずつでも、結果として出てきたデータを分析して地道に改善させていくことが重要です。
予算は限られているので、それをすべて使ってしまう前に、小規模な施策を試しにやってみるとよいでしょう。そうすることで、どこがリテンションに繋がっていないのかということが見えてきます。
メルマガ全部がスパムとは限らない
最近はスパムのようだという理由でメルマガによるマーケティング手法を避けるマーケターが増えています。しかしこれは大きな間違いです。メールを受け取ったユーザーがそれを開くということはつまり、「それを読みたい」というユーザー側の意思の表れであると言えるからです。それなら、少しでも興味を持って開いてくれる人たちに向けて送る価値はあるのではないでしょうか。一ヶ月くらいの時間をかけて、ゆっくりとメールを送り続けてみたら、想像以上の結果が出るかもしれません。
ただし、一度に多くの情報を送りつけて、ユーザーが鬱陶しく思うようなことはしてはいけません。安定的に、少しずつコンタクトを取り続けるということが大事なのです。毎回のメールで、違った側面から商品の魅力を少しずつアピールしていくとよいでしょう。
こうすることで、大きな投資をしなくても、顧客が必要としている情報を読み手側に徐々に届けることができるでしょう。内容に興味のないユーザーはただ単にそのメルマガを開かなくなるだけです。どちらにとっても損することはありません。
マイナス評価にも目を向ける
リテンションのためのよい戦略を練っていたとしても、当たり前ですが離脱するユーザーもいます。そのようなユーザーを見て見ぬふりをすることももちろんできますが、もし離脱したユーザーがいた時には、その理由を聞いてみるとよいでしょう。
「理由としてでてくるのは自社に対するマイナスな評価だから良い思いはしないのではないか」と考える方もいるかもしれませんが、案外そうでもないということが多くあります。たしかに自分たちがこれまでやってきたことを指摘されるのは気持ちのよいものではありません。しかし、ユーザーからの声ほど貴重なものはありません。複数のユーザーから同じ意見が上がってきたとしたら、そのタイミングでその問題について考えなおすべきなのです。
もしも、試用期間のあとにユーザーがキャンセルをしてしまうような価格設定にしているなら、「高い」と驚かせないような方法を考えるとよいでしょう。顧客がなぜそれをキャンセルしたのかという理由を知るためには、とにかく聞くしかありません。ユーザーの声が聞けるサービスとしては、UserVoiceというものがあります。ユーザーが離脱してしまった理由を知ることができたら、リテンションにおける改善点も見えてくるのです。
サービスのオプションを拡大・縮小する
付加価値を与えられるようなものを常にいくつか考えておくことも重要です。例えば、会計に関するアプリを作っていたとしたら、一般的に使われているソフトウェアと自動的に同期できたら、ユーザーにとって便利ですよね?ユーザーに付加価値を与えられたら、より長くそのアプリを使い続けてくれるでしょう。そのサービスにいくつかオプションを付けられたら、使い手はそれらを組み合わせたり使い分けたりして、自分のニーズにあったものを個人個人でカスタマイズしていけるのです。
それと同時に、提供しているサービスを思い切ってやめてしまう勇気も必要です。というのも、たくさんのオプションを与えすぎてしまうと、ユーザーにとっては自分が使いやすいようにカスタマイズするのが難しくなるからです。シンプルな商品がユーザーにとっては価値のあるものになるという場合もあります。あまり使われないような機能ばかりがあっても、複雑になって嫌になってしまうだけです。
持続的なグロースハック
グロース「ハック」と聞くと、何か悪いものだと思ってしまう人もいるかもしれません。グロースハックはとにかく結果が全てです。ひとつのことを試してみて、もしそれがうまくいかなかったら次のことを試してみればよいのです。小さなことが大きな結果に繋がるようなことがあります。流入やコンバージョン、リテンションに繋がるようなセールスファネルを作っていくことが、効果的なグロースハックに繋がります。
まとめ
リテンションの改善策としては主に、「ユーザーのニーズを理解し、それを考えてデザインをすること」「テストを繰り返しそのデータをもとに改善策を考えること」「ユーザーからの評価をしっかりと受け止めること」という点がこの記事で紹介されています。当たり前のように見えて、普段は目を背けてしまうようなポイントなのではないでしょうか。改めてこれらの点を確認していく必要がありそうです。- growth hack japan
記事情報
本記事は国際的なグロースハックエージェンシーであるGrowth DevilのFacts About Growth Hacking Everyone Thinks Are Trueという記事を翻訳しました。こちらのブログはWall Street JournalやWired Magazineにおいても紹介されています。Growth Devilはテクノロジー系のスタートアップの資金調達や急速な成長のための手助けをしながら、起業家のサクセスストーリーを発信しています。