Chapter 5では、人々をプロダクトに惹き付ける(Pull)方法に関して学びました。

そこで本章では、プロダクトを人々に押し付ける(Push)ことによってトラフィックを獲得する方法を述べていきます。

人々を惹き付けるためにご紹介した方法では、人々にプレゼンのスライドを提供したり、人々が閲覧したがるビデオや、読みたがる資料をネット上に公開する等々の主に人々を物で釣る施策が中心でした。

グロースハッカーである皆様は、実際に需要があるものを無償で提供したのです。

一方、押し付ける方法は多くの場合、人々が消費しているものを途中で遮ることを必要とします。

あなたが提供するのは人々が読みたがるツイートではなく、そのツイートを読む前に表示されるTwitterの広告なのです。

あなたが提供するのは人々が見ようと思っている動画そのものではなく、動画が配信される前にYoutube等の画面に表示される広告なのです。

惹き付ける方策はグリム童話に出てくるヘンゼルとグレーテルのお話に似ています。お菓子で造られたお家に誘惑され、彼らは自分の意思で家の中に入っていきます。

一方、押し付ける方策は3匹の子豚のお話に例えることができます。狼は3匹の子豚の家に侵入できるまで、執拗に息を吹き付けます。

あなたは人々を自分の世界に引き込むこと(Pull)、あるいは自分を人々の世界に押し込めること(Push)の両方ができるのです。

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本連載の目次:

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Chapter 6:トラフィック獲得に欠かせない4つのプッシュ型テクニック

目次

・   ユーザーのライフタイムバリューを理解する

・   テク1:広告掲載

・   テク2:クロスプロモーション

・   テク3:アフィリエイトの活用

・   テク4:直販

・   まとめ

ユーザーのライフタイムバリューを理解する

ライフタイムバリュー(LTV)とは、自社プロダクトのユーザーがユーザーである間に生み出すレベニューのことを指します。

例えばあなたがeコマースのアプリを開発して、一年あたり一人のユーザーから1万円の歳入があるとします。

一般的なユーザーは平均5年間であなたが提供する商品に飽きてアプリで買い物をしなくなる場合、あなたのプロダクトのLTVは5万円となります。

LTVを理解する必要があるのは、プッシュ型方策はプル型方策とは異なり、大概出費を伴うからです。

上の例を再度用いるならば、LTVが5万円であるとわかっている状況で、一人のコンバージョン率を上げるために5万1円のコストをかけてしまっては本末転倒。

簡単に言ってしまえば、一人のユーザーを獲得する度に、1円失っていくことになるのです。

プッシュ型方策を実行する際、このことを頭の片隅に入れておきましょう。

テク1:広告を掲載する

一見グロースハックには見えないかもしれませんが、プロダクトを流通させるためにも広告掲載はハックすべき領域です。

もちろん何も戦略がない状態で広告枠を購入し、独創性を発揮することも、広告のA/Bテスト等の多変量解析を行うこともせずにただ広告を掲載したならば、人並みの結果しか得られず、グロースハックとも呼ばないでしょう。

しかし、我々のやりたいことはそんなことではありません。

広告を掲載する上で注意しなければならない点は:

・広告掲載が可能なプラットフォームの選択肢をわかっておくこと

広告掲載を行う方法は沢山あります。

多くの人々はFacebook、Google、Twitterしかないと考えがちですが、実際はそれよりも遥かに多くの選択肢が存在しているのです。

例えばLinkedInに広告掲載をすることだって可能であり、あなたのプロダクトがBtoB向けならばこの施策は合理的なものでしょう。

モバイルユーザーのみに対象を絞りたいならば、Tapjoyというサービスを活用して広告掲載を効率的に行うこともできます。

(growth hack japanでも広告掲載の募集を随時行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。)

Tapjoy_screenshot

他にもアメリカでは、CarbonやThe Deckなどのように特定の層をターゲットにできるニッチな広告ネットワークが存在しています。

日本語には対応していませんが、BuySellAdsというサービスもあり、ウェブサイト上のバナー広告、ツイート、ニュースレターのスポンサーシップ、RSS配信、そしてモバイル端末アプリ内の広告枠の購入も可能にしてくれる、広告代理店的な役回りを果たしています。

上記以外にも、リマーケティング(リマケ)に的を絞っているサービスもあります。

リマケとはあなたのサイトに訪れた人をネット上で追跡し、彼らにのみ広告を表示するマーケティング手法を指します。

そのため、リマケサービスを使えば自社プロダクトに興味を持った人々にのみ広告を表示することが可能になるのです。

リマケ広告の事業領域だけでも数多くの企業が存在していますが、アメリカではInc. Magazineで最優秀広告代理店として取り上げられたAdRoll、日本では2013年度のGoogle Excellent Performer Award金賞に輝いたRinCrewが例として挙げられるでしょう。

ここ数年の間に、広告掲載の選択肢は爆発的に増えました。人によっては選択肢が多すぎると言うかもしれませんが、自分のプロダクトと相性がいい広告媒体を見つけたい人にとっては願ったり叶ったりの状況とも言えるでしょう。

・あなたが選択したプラットフォームの特徴を掴む

あなたのニーズに見合った広告媒体を見つけたのならば、次にそのプラットフォームが提供している広告プランに関する特徴を理解する必要があります。

広告掲載によって収益を向上させるか、損をするかは単純にプラットフォーム自体の細かな規則を理解しているかどうかによってしまうこともあるのです。

おそらく最も使い方が複雑で込み入った広告媒体はGoogle AdWordsで、使い方を完全に習得しようとしたらゆうに一ヶ月とかかかってしまいます。

一方で、他の媒体の多くは週末の2日間さえあれば、十分に理解できることでしょう。

・広告掲載は常に熾烈なビジネスモデル間の競争に晒されている

クリック単価やインプレッション数獲得のためにどれくらい出費すべきなのか、という判断は常に困難を伴いますが、その答えは常にあなたのビジネスモデルに依存します。

もしあなたが他社と同じターゲットを顧客層と想定していたとしても、競合他社よりも自分達のビジネスモデルが優れており、LTVも高かったならば、赤字にならずともトラフィック獲得により資源を割けるのです。

広告掲載によって顧客獲得するためには優れたビジネスモデルが必要なのです。

顧客獲得のために他社よりも2倍も多くお金をかけられるとしたら、戦略的に非常に優れていると言えるでしょう。

・ユーザーの多様な人間性を想定する

プロダクトユーザーは複数のプラットフォームから接触を図ることができます。

例えば、あなたのプロダクトユーザーはFacebookとLinkedInの使用度が高いと仮定しましょう。

このとき、ユーザーがどのような思考状態の時にあなたのプロダクトを欲しがるのかということを熟慮する必要があります。

人々はFacebook上にいるときは家族のことや友人のことで頭が一杯でしょう。彼らは他人がアップロードした写真見たさにFacebookを利用しているのです。

一方、同じ人であってもLinkedIn上にいる場合は、どのようにすれば出世できるかや、人脈形成が自分のキャリアアップに如何に有益であるかを考えていることでしょう。

もしあなたのプロダクトがプロジェクトマネージメントツールであるならば、Facebookはプラットフォームとして選択すべきではないでしょう。

例えあなたのプロダクトのターゲット層にリーチすることができたとしてもです。

確かにあなたの広告は彼らの目に入るかもしれません。

しかし、相性の悪いプラットフォームを選択してしまったことにより、おそらくあなたが発信した情報は彼らの頭の中を素通りしてしまうのです。

広告媒体を選択する際は、そのプラットフォームに人々がいる時、彼らの思考回路があなたのプロダクトと相性が良いのか否かを入念に選定しましょう。

・可能な限り仲介業者を避ける

このテクニックと上手く折り合いをつけることは難しいかもしれませんが、それでも言及しておくことには価値があります。

広告代理店を通してあなたのターゲット層がいるサイトやブログに広告を掲載することはもちろん可能です。

しかし、仲介業者を介さずに直接そのサイトやブログのオーナーに掛け合うことができれば、以下の2つの理由から格段に割安で済ませるのです。

まず第一に、広告代理店を介した場合、広告出稿までの全ての過程において手数料が発生するため、純広告が掲載できれば、あなたもサイトのオーナーもともに失う金額がなく、得をするのです。

二つ目としては、サイトのオーナーと直接交渉ができる点にあります。公開されている掲載料金より実際に掲載する料金の方が安いことが往々にしてあります。

価格交渉を行うことによって、より低い料金で掲載できることもあるのです。

・広告のクリック数に応じて掲載料金が変動するシステムならば、一つ一つのクリックを重んじること

広告掲載には2通りの方法があります。

一つ目は、広告枠をCPMを基に購入する方法、つまり、クリック数によらずあるインプレッション数に対して金額を支払うということになります。

二つ目は、クリック数に応じて掲載料を支払う方法、つまり、何回広告がサイトに表示されたかにかかわらず、実際に人々が広告をクリックして初めて掲載料金の支払いが生じるということになります。

もしあなたがクリック数に応じて掲載料を支払っているならば、本当にあなたのプロダクトに興味を持った人以外にはクリックして欲しくないですよね。

この対策としては、いくつか方法を挙げられます。

・   広告のバナーにプロダクトの金額も記載することによって、クリックの前段階で人々にプロダクトの使用には支払いが発生することを知らせる。

・   人々の感情や視覚に訴えることによって本当にプロダクトの購入につながる場合以外は、感情に訴えかけるようなバナーにしない。例えば、あなたのプロダクトに猫が一切関係ないのならば、単純に猫好きな人々にバナーをクリックしてもらうためだけに可愛い猫ちゃんの画像を用いることは得策ではない、ということです。

・何種類かの広告を試してみる

広告掲載を行う上で最初にわかっておかなければいけないことは、人々がどのようなバナーに反応するかは未知数であるということです。

キャッチコピーのフレーズやバナーとして用いる画像、そしてこの両者の組み合わせ、と試すべき組み合わせは無数にあります。

Chapter 3でもA/Bテストの重要性を強調しましたが、どのバナーが良いのかを示してくれるのはデータ分析の結果なのです。あなたの直感や心証ではありません。

テク2:クロスプロモーション

自社サイトにトラフィックを獲得する最も簡単で無料な方法として、他の企業と提携してクロスプロモーションを行うことがあります。

もし自社のターゲット層にリーチしている企業が他にあって、自社プロダクトとその企業のプロダクトが競合しない場合は、協力しながら互いのプロダクトをプロモーションしていく方法はいくらでもあるのです。

すぐに思いつくアイディアとしては:

・   相手の企業に関してお互いにツイートする

自社、及び提携している企業が、お互い自社のフォロワーに対して相手企業に関するツイートを行うということです。

・   相手の企業に関する情報をお互いFacebookにポストする

自社、及び提携している企業が、お互い自社のFacebookページに相手企業に関する情報を掲載ということです。

・   相手の企業に関する情報をお互いダイレクトメールでユーザーに配信する

自社、及び提携している企業が、お互い自社のユーザーに相手企業に関する情報をダイレクトメールで配信するということです。

・   相手の企業によって協賛してもらっていることを明記する

お互い、自社のメルマガの最下部のところに、「Sponsored by」の文言とともに相手の企業によって協賛されていることを記すということです。

・   相手の企業広告をお互い自社サイトに掲載する

自社、及び提携している企業が、お互い自社サイトに相手企業に関する広告を掲載するということです。

・   相手企業のプロモーションビデオをお互い自社サイトに掲載する

・   相手企業が行っているキャンペーンをお互い自社サイトで告知する

等が挙げられます。

テク3:アフィリエイトの活用

人々に自社プロダクトを認知させる方法に、アフィリエイターを雇うことも考えられます。

この方法では、アフィリエイターになっていただいた方にお金を支払うことによって、その人に特定のゴールを達成(例えば自社サイトのトラフィックを増やしたり、メンバーのアクティベートを増やしたり)してもらいます。

アフィリエイトになった人は、この連載記事でもご紹介している様々な手法を駆使するでしょうが、あなたは自分自身で目標を達成させるのに悩むのではなく、お金を支払う代わりに彼らにやってもらうのです。

この方法を選択する際、気をつけるべきことは以下の3点です。

・インセンティブの与え方は慎重に

例えば、アフィリエイターがユーザー登録を増やす毎に1万円を支払うと決めていたとしても、獲得した新規ユーザーが数ヶ月間アクティブユーザーであり続ける必要があるという条項なしでは、インセンティブの与え方に問題があります。

このインセンティブでは、アフィリエイトはすぐに解約するような質の悪いユーザーを大量に獲得しても報酬をもらえてしまうのです。

あなたの企業が得をする場合のみ、アフィリエイトも得をするようなシステムが理想でしょう。

アフィリエイトのソリューションを自社のみで作成しようとしないこと

アフィリエイトシステムの構築及び運営を容易に可能にしてくれるツールや、実際に自社プロダクトをプロモーションしてくれるアフィリエイターの獲得を可能としてくれるツールは世の中に沢山あります。

例えばアメリカでは、Commission Junctionがアフィリエイターと直接やりとりを可能にするサービスを提供していたり、DirectTrackやOmnistarはアフィリエイターへの支払い状況を追跡してくれるサービスを提供しています。

日本では、DMMが上記のようなアフィリエイトシステムを提供しています。

DMM_affiliate

・アフィリエイターの評価は早い段階で行うこと

アフィリエイターは、第三者から見ればあなたの企業・プロダクトを象徴するような存在に写ります。

アフィリエイターが用いる手法、言葉遣い、全般的な行動スタイルは全てあなたの企業・プロダクトを反映したものになるのです。

彼らは社員ではないかもしれませんが、アフィリエイターがリーチする人にとってはあなたの企業のブランドイメージを映す鏡になります。

アフィリエイターの採用は慎重に行いましょう。

テク4:直販

率直に申し上げると、直販はグロースハックの手法としてくくるのには無理があるかもしれません。

しかし、ファネルの最上層にトラフィックを獲得する方法の一つではあるので、無下に扱うのは得策ではありません。

直販という手法はプロダクトとの相性にもよりますが、時と場合によっては有効な方法です。

実のところ、growth hack japanを運営している弊社も、Webコンサルティング会社としてSEO対策プランを提供するところからスタートアップしましたが、元はテレアポから契約をとってくるという直販のスタンスで成長を遂げました。

スタートアップが直販をグロースのための手法として用いることは想像しにくいかもしれませんが、実際に弊社以外にも成功例はあり、上手くいくこともあるのです。

本連載の目次:

グロースハックに関する最も確実は手引書

まとめ

・   プッシュ型グロースハックは人々が消費しているコンテンツを途中で遮ることを必要とします。

・   プッシュ型グロースハックは通常、出費を伴います。

・   出費を伴う以上、あんたのプロダクトユーザーのLTVを把握している必要があります。各ユーザーが生み出すレベニュー以上にユーザー獲得に資源を割かないようにしましょう。

・   プッシュ型グロースハックの4つのテクニックとは:

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