3/14の最新記事『もう一つのグロースハック条件「認知的負荷最小化」5つのポイント

「素晴らしいサービスなので使ってください」

そう言ってユーザーが自然に増えるほど現実は甘くありません。

多くのユーザーに愛されるサービスは、優れたプロダクト体験に加え、巧みな説得技術を活用してユーザー数を増やしています。消費者行動心理学と密接に関係するグロースハックで知られるウェブサービスやアプリは、まさにこの「説得技術」を上手に活用しているケースが多いのです。

本日は、心理学とマーケティングの権威であるロバート・B・チャルディーニ著「影響力の正体」で紹介されている6つの説得技術を基に、グロースハッカーがいかにして説得技術を活用しているかをご紹介致します。

返報性

人間は恩義に弱い生き物です。誰かに何を与えられた時、「この恩を返さなくては」という思いが心理的に働き、義務感から何らかの形で恩に報いようと試みるのです。

心理学では、この義務感を「返報性の原理」と呼び、マーケティング業界でも頻繁に活用されています。

例えばグロースハック関連の有益な情報を日々更新するアナリティクスソリューションサービス「KISSmetrics」。

英語でマーケティングやグロースハックに関して調べ物をしていると、必ずと言っていいほどKISSmetricsのブログに遭遇します。

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「有益な情報を無料で公開するなんてもったいない」と考えるのももっともですが、KISSmetricsが有益な情報を公開する理由こそ、「情報をくれた代わりに数あるアナリティクスソリューションサービスの中でもKISSmetricsを使うことにしよう」という返報性の原理にあるのです。

鋭い方なら既にお気付きの通り、KISSmetricsが行なっているのはまさしくコンテンツマーケティング。ブログを使ったコンテンツマーケティングはSEO効果が注目されがちですが、ユーザーの返報性に訴えかけるというメリットも存在しているのです。

一貫性

「言ってることがコロコロ変わる人」と「いつも一貫性のある発言をする人」、どっちが魅力的でしょうか?

全員とは言わずとも、大半の方が後者と答えるでしょう。

他人を評価する時と同様に、多くの人は「いつも一貫性のある発言をする人」として自身のことも見てもらえるように努めます。そしてこの一貫性(整合性)に対するこだわりに上手に訴えることで、アクイジションやリテンションを大幅に高めることが出来るのです。

整合性に訴えることでグロースハックに成功した最良の例の1つは、人気アウトドアフィットネスアプリ「Runkeeper」でしょう。

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Runkeeperは、フィットネスアプリとしては早期にFacebookログインを導入し、注目を集めました。FacebookのAPIを利用したことにより、ランニングやサイクリングの記録がFacebook上の友人のフィードに表示される仕掛けを構築したのです。

これだけ聞くと単なるリファラル最適化施策の1つに聞こえますが、肝となるのはRunkeeperがフィットネスアプリだったこと。

みなさんも一度は『「ジムに通う」と高らかに宣言した割に、3日も経たずにジム通いを諦めてしまう人』を見たことがあるように、発言と行動に一貫性のない姿はあまりカッコイイものではありません。

Runkeeperは、一貫性の無いカッコ悪い人間に見られたくないという人間の見栄に上手に訴えることで、ユーザーのリテンションを促すことに成功したのです。

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社会的証明

「今人気沸騰中の○○」、「世間が注目する○○」、などなど、日常に溢れかえったこれらのキャッチコピーは、「社会的証明」に対する人間の欲求に訴えかけた産物です。

所謂一般的な人間(特に日本人)は、道を踏み外すことを嫌い、「みんなが注目しているなら…」というきっかけで物事を始めることが多い傾向にあります。どんなにいいプロダクトやコンテンツでも、社会的証明なしにユーザーを獲得したり、エンゲージメントを高めたりすることは極めて難しいと言えるのです。

Google PlayやApp Storeのアプリレビューは社会的証明の最たる例と言えますが、アプリの中にも社会的証明に対する欲求に訴えかけたグロースハック施策は多く見受けられます。

例えば以前に「若年ユーザーを狙うなら絶対無視できないシリコンバレーの最新トレンド」の中でお伝えしたWhisperは、コンテンツのカテゴリを「Popular(人気)」、「Featured(注目)」、「Latest(最新)」、「Nearby(近く)」の4種類で分けています。「Popular(人気)」と「Featured(注目)」という言葉を使って、「皆が見てるなら私も見てみよう」という心理に訴え、ユーザーのエンゲージメントを高めているのです。

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権威

「あの有名人が推薦する激ウマラーメン店」、「あの科学者が勧める驚きの健康法」、などなど、人間は得てして「権威」に弱い生き物です。例え聞いたことのないサービスでも、「あの人が言うなら…」と、その気になってしまうのです。

「権威」を利用した事例はB2Bサービスによく見られます。以下の画像はグロースハック支援ツールの「Optimizely」によるウェブサイトの1ページになりますが、ご覧のように有名企業のロゴをズラリと並べ、見込み客に安心感を与えています

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実はグロースハックジャパンも、「権威」の恩恵を受けているウェブサービスの1つです。

ホリエモンこと堀江貴文氏に、彼自身のウェブサイト「horiemon.com」でグロースハックジャパンの記事「大卒なんて意味が無い!?シリコンバレーを彩る「中退起業家」 7人」を取り上げて頂いた際には、元々いいね!やツイート数があまり伸びていなかった同記事に大きな注目が集まりました。

直近でも「グロースハックの代名詞Airbnbのトイレ版Airpnpがアメリカで話題沸騰中」に関してつぶやいて頂き、おかげでサイト訪問数が大きく伸びています。

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好意

母親にいくら言われてもしなかったのに、恋人に指摘された途端部屋をキレイにした経験はありませんか?

人間は好きな人にほど影響を受けやすい性質を持っており、フェイスブックやツイッターを通じたリファラルはこの性質を基に成り立っています

「好意」をマーケティングに活用した例として挙げられるのがFacebookのイベント広告です。

フェイスブックのイベントページを見てみると、誘われてもない一般向けのイベントがカレンダーに組み込まれているのをお気づきですか?

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このイベント広告には、必ず「(友人の)○○さんが参加します(○○ is going)」といったコピーが挿入されています。「好意のある友人が参加する」という説得材料を上手く使った施策です。

希少性の原理

先日の記事『「希少性の原理」を利用したグロースハック成功例・失敗例 8選』でお伝えした希少性の原理も、立派な心理学テクニックの1つです。

希少性の原理とは、「モノの数が限られていればいるほど、そのモノを貴重と捉えるようになる」人間の心理を表した原理です。詳しくは前述の記事をご参考に頂ければと思いますが、限られた数しか提供できないことをユーザーにアピールすることで、ユーザーの購買意欲を高めるマーケティング施策をグロースハックで知られる様々なサービスが実施しています。

例えばクーポンサービスのグルーポンが、各クーポンの有効期限を秒単位で表示しているのも、プレミアム感を演出するために希少性の原理を利用した事例にあたります。

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 最後に

心理学とグロースハックは切っても切り離せない関係にあります。ユーザーの特性を理解し、適切な心理学テクニックを活用することで、大幅な重要メトリックの改善に繋がることも期待できるでしょう。

一方で、「一貫性」や「希少性の原理」の使い方を間違えれば、かえってユーザーのアクションを抑制することにも繋がりかねません。緻密な仮説を基にMVP(特にインタビュー)を構築し、ユーザー体験を最大化するために最も適切な心理学テクニックはどれか、突き止める努力が必要です。

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